33年の時間を巻き戻し天文少年ならぬ天文壮年へ再入門。隊員1名、200mm、65mmの望遠鏡と双眼鏡で星空を楽しんでいます!
かんむり座Rの変光のしくみ解説
2009-04-15 Wed 00:32
月の出が遅くなって来ると天気は下り坂。今夜は雨です。

090414.jpg かんむり座R星は恒星大気中に水素が少なく炭素が多い「炭素星」と呼ばれる星。その炭素の煤が星の光を遮る時に減光する不規則変光星でかんむり座R型変光星の代表として有名。この星ただいま減光中なのだが、いつになく長い眠りを貪っているようで、いっこうに目覚める気配がない。[左図は滝星図をトリミング、下図は過去38年間の光度曲線(3月21日記事参照)]

090320.jpg

かんむり座R 死んじまったわけじゃあんめーな(08年10月26日)
かんむり座R(R CrB)の現状(09年3月21日)

 いったいこの星の中で、あるいは周囲で何が起こっているのか。炭素星の変光のしくみを説明する以下のいくつかの解説を読んでみた。
【Wikipediaかんむり座R星】大気中の炭素が上層部に達すると冷却して煤となり、星の光を覆い隠すからと考えられている。大気の下層部まで煤が来ると温度が高くなるので煤は蒸発し星は元の明るさに戻る。

【富山市天文台】星の大気中を循環している炭素が大気上層部に達すると、炭素が冷えて凝固し、無数の細かいチリになる。これが、重力で下降するにつれて、不透明な雲となり、星が減光する。星の大気の下層部まで達すると、温度が高いので、気体に戻り、再び透明となるので、光度が回復する。

 これらはかんむり座R星の大気中での炭素の循環によって減光復光が生じると説明している。これらと異なり大気中での循環ではなく、大気外の宇宙空間へ炭素を吹き出すというのが高橋進氏の説明。

【高橋進氏の解説】炭素を多量に含んだガスが恒星外部に吹き出され、これが恒星半径の20倍くらいまで離れると、炭素のガスは冷えて凝固し、細かいチリの雲となって恒星の光を覆い隠します。これがかんむり座R型変光星の減光の原因と見られています。しかしこの雲は恒星の放射圧によって吹き飛ばされていき、明るさはやがて元に戻っていきます。。

 さらに、2つの白色矮星の核融合反応の燃えかすを宇宙空間へ放出していると解説しているのは以下の頁。

【天文おまかせガイド.net】燃えかすを宇宙空間に放出する為に中心核から表面層へと押し出すときに一時的に燃えかすによって恒星自体の光が遮られて突如変光すると考えられている。

 なるほど、大きく分けて大気内循環説と宇宙空間放出説があるということのようだ。

 08年10月26日の記事のコメント欄で中井さんが解説してくれた内容を以下にご紹介。

【中井さんの解説】過去に噴出した炭素の雲が薄くなりながらも星の周囲を回っていて、たまたま太陽の方向と重なった時に暗くなるという説に最近はなっていると記憶しています。
今回の減光は、以前から回っている雲ではなくて、最近になり太陽方向に重なる前に噴出した雲に隠され始めて、その後過去の雲の濃い部分が太陽方向と重なって来たのだと推論しています。つまり太陽方向に向く前の表面から放出されていて、現在は雲の濃い部分と太陽方向が一致しているのだと。。。そうだとすれば、噴出速度は相当なものですが。
なので、当分復光は無理だと思っています。減光の度合いも雲が濃くて表面に近い(出来立てのホヤホヤ)だからだと思えば説明がつきます・・・と思っています。また表面からある程度離れているのでしょう(周期数年以上)。
以前からの表面から炭素が噴出されて覆い隠されて暗くなるという説はそれはそれで正解だと思います。 この説では、太陽方向に向いた時に噴出するのが条件でした。
が、新しい説では過去に太陽方向と重ならない時期に起きた噴出により生成された雲が周回していて太陽方向と重なった時にも減光するというものです。
なので、たまたま太陽方向に向いた時に炭素が噴出して暗くなるという旧来の説を否定するものではないと思います。

 さらに、

【meinekoさんの記事】ブログ『meinekoの日記』(4月16日)で、R CrB型星に関する最近の動向を紹介してくださいました。
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この記事のコメント
かすてん様、おはようございます。
 これはおもしろいですねー。
 これまで観測されている減光はどれも突然なので、炭素はじわじわ湧いて出るというよりは、一発ドッカンの「打ち上げ」で外に出ているような印象です。
 上空に打ち上げられた炭素が、落下または飛散するならば、「打ち上げ」から「晴れ上がり」までの時間は炭素の量に関係なく、ほぼ一定でないといけないと思います。(初速は毎回一定であると仮定しています)
 それにもかかわらず今回の減光が長いということは、「連続打ち上げスターマイン」になっているということではないでしょうか。過去の減光を見ると「二連発」らしきものはあります。
 以上、ど素人が何も勉強せずに書いていますので、正しそうになければお見逃し下さい。
2009-04-15 Wed 08:03 | URL | S.U #MQFp2i1U[ 内容変更]
恒星大気内か外かは、どこまでが恒星大気かというのと関わりそうなので難しそうです。
私がしばらく前に読んだ総説では、puffという塊で放出されるというモデルでした。なら、放出される方向によっては、地球から見たら暗くなって見えないこともあるのかなとういうのが感想でした。
とりあえず、水素が少なくて炭素リッチな恒星の元素組成をどう説明するかが問題の一つで、天文おまかせガイドの融合してできた星説は、そういうことを考慮して提案された割と新しい説のようです。
2009-04-15 Wed 11:58 | URL | meineko #-[ 内容変更]
S.Uさん
 大気中を循環している炭素による減光よりも一発ドッカンの「打ち上げ」の方がかんむり座R星の変光のイメージにより近い様に感じます。

meinekoさん
 私も書きながら「どこまでが恒星大気か」は考えたのですが、高橋解説の「恒星半径の20倍」のところは大気圏内と言わないだろうと思い、2つに分けてみました。
 「puffという塊で放出されるというモデル」は上でS.Uさんがコメントされている「一発ドッカンの「打ち上げ」」のイメージに近いですね。

以前、中井さんから頂いたコメントの説も後ほどこの記事に追加しようと思います。
2009-04-15 Wed 12:20 | URL | かすてん #MLEHLkZk[ 内容変更]
かすてん様、meineko様、ご解説ありがとうございます。だんだんイメージがつかめてきましたが、確定的なことは言えないのですね。
 それから、多くの場合、決まって14等まで減光するというのが不思議です。8等の減光というのはだいたい明るさで1/1000ですよね。これを説明するには、相当の高度まで炭素が昇って星全体を覆い隠すのでないと説明しにくいと思いますがどうでしょうか。低高度だったら、減光幅が安定しくいと思います。
 それから、もう一つ、この14等になっている時に光っているのは何なのでしょうか。(本体でしょうか、上層大気?それとも炭素?)

2009-04-15 Wed 18:45 | URL | S.U #MQFp2i1U[ 内容変更]
変光星なみなさま、S.Uさんからの質問へのご回答をおねがいします。
2009-04-15 Wed 23:05 | URL | かすてん #MLEHLkZk[ 内容変更]
こんばんは。
かすてんさん>
私の過去コメントの要約をありがとyございます。
先ほども過去ログを遡って読んでいました。
今思うと大胆な事を書いていますね。きっとアルコホールに吸い込まれる寸前の状態で書いていたのでしょう(^^)

S.Uさん>
つい数年前ですが、極小が12等後半でそれから復光したのがありました。これは珍しいケースなのかは分かりませんが、たいていは14等くらいまで暗くなっているようです。今回は15等まで暗くなっています。
それでも元の光度よりも相当に暗いです。ミラ型では相当減光するのは星の表面のTiO(TiO2?)が星の膨張のために低温度になって煤になり星を覆い隠すからだという説があります。これと似たような事がもしかしたら起こっているのかも知れないです。
なお。巨星などでは星の表面といっても定義が明瞭でないです。煤が出来るのは星の表面(太陽程度の主系列星と同じと考えた場合)付近なのでしょうが、それが巨星では相当外側まで大気が広がっていると思われます。
なので考えようによっては星の大気内とも取れます。
何故たいてい8等前後の減光なのかは分かりませんが、赤外線ではそんなに暗くなっていないと考えています。今まで極小時期に赤外線で撮影されたデータなどを知りませんので断言できません。煤を透過するのは大部分が赤外線でしょうが、可視光線の一部も透過して眼視やV等級では暗いけど見えるのでしょう。もしかして、ある方がCCD測光されておられますので、B,V,R,IR(1050nm以下)のデータがあって見逃しているのかも知れません。
減光中のスペクトル撮影をされていたら主にどの元素が透過しているのかが分かるのでしょう。
個人的には、星本体も星の上層大気も透過していると思っています。根拠はありません、感覚的な話です。
またこの星は脈動変光星でもありますので、煤に隠されていても脈動によると思われる変光もあるようです。
2009-04-16 Thu 00:05 | URL | 中井 健二 #7w5mtEUg[ 内容変更]
中井様、詳しいご説明をどうもありがとうございました。
 おかげさまでかんむり座R星を至近距離から見るようなイメージが浮かんできました。が、どの説が正しそうかは私にはまだ感覚的に考えるしかないです。本体も膨張して暗くなるならば、ほとんどの場合に一気に14等まで下ることが理解できるように思います。また、「地球とたまたま方向が合った時だけ減光」というような説を支持するならば、「部分食」が少ないので、雲は相当星から離れているはずだ、ということで納得しました。
 一方、14等よりそれほど暗くはならないというのも何らかの「飽和」機構が働いているはずで、本体からの光の透過・散乱のほかに、最上層部が自力で発光していると都合がよいように思いますので、赤外線での観測がありましたらまたお教え下さい。
 いずれにしても今回の特異な減光は非常によい情報になることでしょうね。
 私は、R CrBはずっと昔に6等の時に見たことしかありません。現在見ることはとても無理なので、チャンスがあればこんど復光する途中を見てみたいと思います。
2009-04-16 Thu 06:26 | URL | S.U #MQFp2i1U[ 内容変更]
中井さん
 脈動しながら炭素を吐き出していて、脈動と煤化が関連しているかも知れなくて、ずーと遠方には過去に吐き出された煤の固まりが降着円盤か惑星の様に回っているらしくて、かんむり座Rってなかなかの役者ですね。

誰かかんむり座Rの視覚的なモデルを見せてくれないかなぁ。
2009-04-16 Thu 12:01 | URL | かすてん #MLEHLkZk[ 内容変更]
S.Uさん
 かんむり座Rに限らず宇宙で起こっていることは実に不思議で、想像を逞しくしてもそれでも追いつけないです。宇宙と同様に素粒子の世界も同じですね。想像力貧困な私の脳みそにはハードすぎます。
 次回かんむり座Rが増光を始めたらぜひ煤の晴れ上がりを見てください。って、私にとっても初めての晴れ上がりなんでした。
2009-04-17 Fri 17:37 | URL | かすてん #MLEHLkZk[ 内容変更]
かすてん様、
 そうなんですよね。とても想像の及ぶところではないです。
 それを、天文屋さんや物理屋さんは、「さも見てきたかの如く」人々に説明するわけであります。
 それを何度も続けていると、陽子の内部の現象であっても、目の前の金魚鉢の内部を描写するがごとくに目に浮かぶように語れるようになるのであります。
2009-04-17 Fri 22:23 | URL | S.U #MQFp2i1U[ 内容変更]
なるほど。。。
講釈師 見てきたような うそを言い

とは違うのでしょうが、
私も気をつけないといけないですね(^^)
2009-04-17 Fri 23:50 | URL | 中井 健二 #7w5mtEUg[ 内容変更]
こんばんは。
書き忘れていました。
今回のかんむり座でアールの長い長い極小は・・・
もしかしたら。。。かんむり座Rが「おかんむり」なのかも知れませんね(^^)
見られたくない何かしらの事情があって「見ちゃいやーん!」と連続打ち上げ花火を1自転分打ち上げちゃったのかも?
そうだとしたら数年以上は晴れませんね。
天岩戸伝説みたいですね。。。
これだけ、おかんむりだといくらご機嫌をとってもなかなかご機嫌が直りませんでしょう。
もしかしたら・・・かんむり座Tが新星爆発を起こしたら「いいものを見せてもらえた」とご機嫌が良くなって復活するかも?ですね。。。
以上、想像と妄想の産物ですので。。。!(^^)!
アルコホールに吸い込まれそうです。。。(^^)
2009-04-18 Sat 00:04 | URL | 中井 健二 #7w5mtEUg[ 内容変更]
S.Uさん
>それを何度も続けていると、陽子の内部の現象であっても、目の前の金魚鉢の内部を描写するがごとくに目に浮かぶように語れるようになるのであります。
 そういうことなんですよね。考えて説明することを繰り返していると、向こうの世界も徐々にくっきりしてくるようです。

中井さん
 中井さんもアルコホールへ吸い込まれる瞬間まで説明を考えているのでご自分なりのイメージができているのだと思います。
2009-04-18 Sat 06:52 | URL | かすてん #MLEHLkZk[ 内容変更]
かんむり座アールさんも、これだけ内情を詮索されては、おかんむりになられてもやむをえないと思います。
2009-04-18 Sat 07:56 | URL | S.U #MQFp2i1U[ 内容変更]
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