33年の時間を巻き戻し天文少年ならぬ天文壮年へ再入門。隊員1名、200mm、65mmの望遠鏡と双眼鏡で星空を楽しんでいます!
小林誠氏のノーベル物理学賞受賞記念講演会へ行ってきた
2009-02-02 Mon 00:43
読者のみなさま、物理ネタがたびたびでご退屈のことと思いますが、いましばらくおつき合いください。

090201.jpg 高エネルギー加速器研究機構(KEK)特別栄誉教授小林誠氏のノーベル物理学賞受賞記念講演会を聴講するために昼食を早々に済ませてつくばの国際会議場(左写真)へ。その開場前の1時間半を利用してS.Uさんにはじめてお会いした。共通する興味の対象である天文や地元の歴史などについて話が尽きず、小林-益川氏のノーベル賞受賞に関連したご専門の研究分野について伺う前に時間切れとなってしまった(もっとも聞いても分からなかっただろうが)。続きはまたゆっくりと教えてもらいます。
0902012.jpg で、講演会は2部構成。第1部は加速器実験でノーベル賞受賞をバックアップしたKEKのBelle実験共同代表山内正則氏の「Bファクトリー実験と小林・益川理論」(右写真)および小林誠氏の「六元模型ができるまで」(下写真)の講演、第2部は小林誠氏、高崎史彦氏(KEK素粒子原子核研究所所長)、山内正則氏が地元の高校生・大学生らからの質問に直接応える形式で行われた。その質問時間は冗長の感を否めなかった(とくに大学生らの質問は幼稚すぎなかったか、もう少しがんばれよ)が、それでも小林氏の回答にはご自身の生真面目で誠実な人柄が存分に現れ、若い人への真摯な回答には共感する事多々あった。⇒[追記]常陽ネットの記事

0902013.jpg 講演会が始まる前には、理解レベルがピンからキリまでの1200人の聴衆に向けて今回の受賞内容を説明するのってはっきり言って不可能と思っていた。ところが、私が楽しめた上にキリに近いヨメさんが眠らなかっただけでなく詳細は別にしてもなんとなく流れを掴んでいるようでびっくりだ。イントロ的な山内氏の解説は十分練り上げられていて分かりやすく、小林氏の講演の前座(失礼)として効果的だったと思う。
 素粒子物理学の現状についてはさらに理解を深めたいと思っている。
★★
今夜の観測:5日振りに星が見えた。W Ori7.1等、R Lep7.5等、RX Lep5.9等、U Mon7.2等、U Ori7.9等。
別窓 | 宇宙と物理ネタ | コメント:10 | トラックバック:0
<<1月の晴天日数 | 霞ヶ浦天体観測隊 | 2周年>>
この記事のコメント
かすてん様、講演会のご感想をご紹介いただきありがとうございます。たいへん参考になりました。

>理解レベルがピンからキリまでの1200人の聴衆に向けて今回の受賞内容を説明する
>のってはっきり言って不可能と思っていた。

 私も不可能だと思っていたのですが、必ずしもそうではなかったようで良かったです。
考えてみますに、これにはいくつかの幸運が重なったものと思います。

 一つは、「粒子と反粒子の違いは何か?」、「なぜクォークが6種類ならいいのか?」という素朴な疑問に対する答えが、そのまま小林・益川理論であることによると思います。もう一つは、6種類のクォークがすべて見つかって、それらに非対称性が測定された、という非常に明快な形で理論が証明された、ということです。
 さらにもう一つ加えれば、小林氏が本質的な部分を正面から正攻法で説明されているということでしょうか。聴かれた方々が、それぞれそれなりに問題の本質に近づく雰囲気を楽しまれたことと、希望的に想像しております。

 「消えた反物質」の本や今回の講演を契機に、天文ほかさまざまなアマチュア科学をやっておられる方々が、今後「アマチュア素粒子物理」もそれぞれの形で始めていただけるとうれしいと思っています。
2009-02-02 Mon 20:23 | URL | S.U #MQFp2i1U[ 内容変更]
S.Uさん、こんばんは。

 昨日はありがとうございました。小林先生もホッとされた気分であの後のパーティへ出られたのではないでしょうか。

 小林先生の講演内容はさすがに巧く構成されていたと感じました。様々なレベルの聴衆がそれぞれのレベルに応じて取捨選択しながらストーリーを追って行けるような、まさにS.Uさんが想定されていた正攻法の話でした。物理学(素粒子論)が整合性ある進展の歴史をたどってきている事もストーリーの分かりやすさに繋がっているのだと思いました。

 第2部については少々厳しい感想を述べましたが、同世代の息子さんのご感想は如何だったでしょうか。また、常陽ネットにも記事が出ていました。私がうんうんとうなずいた小林先生の回答の幾つかが紹介されていました。
http://blog-imgs-26.fc2.com/k/a/s/kasuten/0902022.png

 先日の繰り返しになりますが、天文学にはプロとアマが対等に議論できる分野もいくつか残されていますが、素粒子物理学(特に実験物理学)にはアマの入る余地があるとは思えません。でも、天文ファンとして星見を楽しむのと同じ意味で素粒子ファンとしてプロのS.Uさんにもおつき合いしていただけるくらいの知識はもう一度勉強し直したいなと最近感じております。

[追記]素粒子実験へアマチュアの入る余地もありましたね。以前ご紹介した事のあるB-Lab。
http://belle.kek.jp/b-lab/
http://kasuten.blog81.fc2.com/blog-entry-412.html
2009-02-02 Mon 21:56 | URL | かすてん #MLEHLkZk[ 内容変更]
かすてん様、

>私がうんうんとうなずいた小林先生の回答の幾つかが紹介されていました。

 私は出席しなかったので、質問の一端がうかがえてよかったです。ご紹介ありがとうございました。

 学問や研究に向かうときの態度についての回答であっても、私たちに完全にうなずけるというのが小林先生の有難いところだと思います。はるか遠くの雲の上ではなく、少し頑張って走り続ければ背中が大きく見えて来そうな、そういう雰囲気を若い方々に感じていただければ、これが日本の科学の伝統となってさらに成長していくものと思います。

 そうですね。いろいろな粒子に会いに行けると言うだけでも、B-Labは画期的ですよ。また、機会があれば、コメントさせていただきたいと思います。
2009-02-03 Tue 21:44 | URL | S.U #MQFp2i1U[ 内容変更]
ところで、受賞以来マスコミや講演会に引っ張り回されている小林先生ですが、上にも書きましたが遠くから見ている限りでは「生真面目、誠実、温和」という印象を持ちますが、物理に関する議論の時はまた別の顔があるのでしょうか。ご迷惑にならない範囲で教えてください。
2009-02-04 Wed 09:22 | URL | かすてん #MLEHLkZk[ 内容変更]
かすてん様、そういうことは気になりますですよね。
残念ながら、私は、小林先生と物理のシリアスな議論をしたことはないのです。理論物理については私のほうが議論になりませんので、いつも優しく易しく教えていただいております。また、先生が実験の詳細について議論をたたかわせて来られることもありません。研究活動全般や事務的なこと、雑談などの話をさせていただいたことは何度もありますが、これは、テレビや講演会でご覧の通りの印象です。

 しかし、素人さん向けの講演会ですら、本質的な点と正確さをゆるがせにされないことから想像されるように、物理の研究者との議論では、正しいこと、間違っていること、まだ解明されていないこと、を厳格かつ明瞭に区別して指摘されているように思います。
2009-02-04 Wed 19:56 | URL | S.U #MQFp2i1U[ 内容変更]
S.Uさん

>実験の詳細について議論をたたかわせて来られることもありません
 ご経験談をありがとうございます。専門家がシビアな議論を戦わせるのはそれぞれの専門分野に於いてですものね。小林先生とS.Uさんは物理学とか素粒子という共通点はあってもそれぞれ専門が違うのでそういう議論を戦わせる場面が無くて当然でしたね。

>厳格かつ明瞭に区別して指摘されているように思います
 常陽ネットからの記事の最後の「真実ではない理論はいっぱいある。発表するのになんのためらいもない」という回答は、厳格に論理を構築していく帰結として「発表するのになんのためらいもない」という意味で答えられたはずです。会場はかなり受けていたのですが、ちょっと勘違いの笑いもあったように自分には感じられました。

「ソリューシの夜明け」というこんな記事を見つけました。
http://mytown.asahi.com/ibaraki/newslist.php?d_id=0800053
2009-02-04 Wed 21:16 | URL | かすてん #MLEHLkZk[ 内容変更]
かすてん様、今夜は、KEKからは金星がオレンジ色に見えました。これって黄砂? それとも浅間山??

>厳格に論理を構築していく帰結として「発表するのになんのためらいもない」
>という意味で答えられたはずです。会場はかなり受けていたのですが、
>ちょっと勘違いの笑いもあったように自分には感じられました。

 そうですね。おっしゃる通りだと思います。ここでは残念ながら勘違いした人もあったかもしれませんね。
 でも、自然の真理は人間の論理だけでは簡単には到達できない、ということを感じていただければ、もうそれで十分だとも思います。

「ソリューシの夜明け」のご紹介ありがとうございます。これは、朝日新聞茨城版の地方版にとどめておくには惜しい(と関係者が思うような)「熱血取材」でした。

天文ガイド見ましたょ
2009-02-05 Thu 19:37 | URL | S.U #MQFp2i1U[ 内容変更]
「熱血取材」
 「熱血取材」をこのコメント欄だけで終わらせてしまうのではもったいないですから、後日表の記事でも紹介しておきましょう。
 天文ガイド、上手に収めていただきました。
2009-02-05 Thu 22:12 | URL | かすてん #MLEHLkZk[ 内容変更]
それから、この「天文ガイド」(2009.3号)には、「2/21の『小林・益川シンポジウム』のお知らせ」が2箇所にわたって出ています。(かすてんさんに、1月20日のブログに【追記】として紹介いただいたものです) またも宣伝で恐縮ですが、まだ締めきりになっていませんので、ご興味のある方で都合がつく方はご参加下さい。

 どの雑誌に広告を出すと効果的か、という客観的な調査・検討の結果、「『天文ガイド』の読者層に期待」という結論になったといいます。
2009-02-07 Sat 07:14 | URL | S.U #MQFp2i1U[ 内容変更]
「ソリューシの夜明け」の紹介は明日のネタに書きます。では、シンポについてももう一度ご案内しておきましょう。

>どの雑誌に広告を出すと効果的か、という客観的な調査・検討の結果、「『天文ガイド』の読者層に期待」という結論になったといいます。
 それはもしかして「霞ヶ浦天体観測隊」で大々的に取り上げたことが誤ったリサーチ結果に繋がったという事はないでしょうね。んなわけないですね。
2009-02-07 Sat 07:54 | URL | かすてん #MLEHLkZk[ 内容変更]
コメントの投稿
 

管理者だけに閲覧
 

この記事のトラックバック
トラックバックURL

FC2ブログユーザー専用トラックバックURLはこちら


| 霞ヶ浦天体観測隊 |

FC2カウンター