33年の時間を巻き戻し天文少年ならぬ天文壮年へ再入門。隊員1名、200mm、65mmの望遠鏡と双眼鏡で星空を楽しんでいます!
野尻抱影→『星戀』→山口誓子→鈴木壽壽子
2009-01-10 Sat 00:07
0811272.jpg 以前書いた「野尻抱影『星と傳説』」の記事の最後に「野尻抱影氏の本がお好きだった鈴木壽壽子さんにまた一歩近づけた気がした。」と書いたが、あれではあまりに説明の足りない終わり方だった。以下のようなことが一挙に脳裏に飛来したのだった。

「星戀」とは野尻抱影氏の造語だが、鈴木さんの『星のふるさと』を評する文中でも時々「星戀」が使われている(『天界』610号(1976)新刊紹介など)。

『星のふるさと』文中には、中村草田男の「火の島は夏オリオンを暁の星」の句が好きとしか書かれていないが、その他にも山口誓子や上田秋成の句が所々に引用されていることから鈴木さんはきっと俳句がお好きだったに違いない。

『星のふるさと』の「旄頭胡星(ぼうとうこせい)」の中では「名ある星春星となりてみなうるむ」という誓子の句を引用している。霞ヶ浦の畔に住む私には非常にリアリティのある印象的な句だが、校正ミスなのだろうかこの引用には間違いがある。正しくは「名ある星春星としてみなうるむ」である。そういうことはあるにせよ、鈴木さんが誓子の句も好きだったことは確かだろう。誓子の星好きは有名だそうで、星好きとしての共感もあったに違いない。また、鈴木さんが郊外の団地へ引っ越して来る前にお住まいになられていた四日市のとある漁村に誓子もかつて住居していたという共通点があったりもする。

鈴木さんが野尻抱影氏の著作を好きだったことも確かで、そうであれば野尻抱影・山口誓子共著『星戀』を読まれていなかったはずはない。

以上のようなことすべてをひっくるめて『星戀』を知ったことで「鈴木壽壽子さんにまた一歩近づけた気がした」のであった。『星戀』についてはいずれ紹介したい。
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この記事のコメント
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「星戀」とは無関係な話題ですが、インフルエンザにかかってしまい40℃近くの発熱に苦しみました。今は回復してますが3日程度は感染させるかもということでおとなしくしております。予防接種も受けたのになあ。六草粥どころか一草粥すらいただかなったバチがあたったのかも…。かすてんさんも観測時は十分な寒さ対策をしてくださいね。こんな時はまさに「てんぶんがく」にいそしむしかなさそうです。
2009-01-10 Sat 13:13 | URL | FLUID #-[ 内容変更]
私は人口密度希薄なところで生活しているので案外インフルからは守られています。FLUIDさんの環境はその対極にありますものね。お大事に。しかし、そういう私も明日は公共交通機関を使って都会へ出るので、免疫の低い我が身には少々過酷かも。気を付けます。
2009-01-10 Sat 14:01 | URL | かすてん #MLEHLkZk[ 内容変更]
かすてん様、こんばんは。(昨夜つくばに戻って参りました。向こうはけっこうな大雪でした)
 鈴木さんの『星のふるさと』は平たく言えば「天文随筆」ですが、やはり野尻抱影の影響が大きいのではないでしょうか。『星戀』の内容の半分は抱影翁の天文随筆ですから、ここから影響を受けられたはずだと思います。
 そもそも、自分の生活をおりまぜた「天文随筆」は、かなりユニークな形式のもののように思います。抱影翁でもそれに主点を置いた作品というのはそれほど多くないようです。どこかに鈴木さんの「発想の元」になった本があるのではないかと思います。(『星戀』とほぼ同時期に出た『星三百六十五夜』がその最たるものだと思いますが、鈴木さんはこれも読んでらしたでしょうか。)
2009-01-13 Tue 22:05 | URL | S.U #MQFp2i1U[ 内容変更]
S.Uさん、お帰りなさい。
 お友達に会う時間まではありましたか?

>ここから影響を受けられたはずだと思います。
 息子さんのお話では野尻抱影氏の本は好きだったとのことですから影響は受けたかもしれません。
 ただ、『星のふるさと』の「結びにかえて」で鈴木さんは戦中の女学校時代のこととして「若い頃から書きためてあった星座の図と観望記を綴じた物を伊勢湾台風で流してしまった」と書かれています。ということは1947年初版の『星戀』が直接の影響ということでは無さそうです。
 絵を描くことが好きで上手で、日記代わりに書く随筆や詩や俳句の挿絵に星の絵を添えるというのは鈴木さんのオリジナルのスタイルだったようです。
2009-01-14 Wed 12:28 | URL | かすてん #MLEHLkZk[ 内容変更]
かすてん様、こんばんは。

>お友達に会う時間まではありましたか?

残念ながら、実家には滞在時間24時間未満で、そういう時間はありませんでした。というか、連休に帰省などしている私より、地元に仕事のある友人のほうがおそらくさらに多忙なのですよね。

 鈴木さんの件ですが、そういう時代から日常生活と星を織り交ぜた天文随筆を書いていらしたとすると、やはり元もとそういう心の豊かさというか素養のあった方なのでしょうね。
 ただ、抱影翁は、戦前出版の星座解説本にもすでに天文随筆を書いていたのではないかと思います。あとで調べてみます。鈴木さんが星座を学ぶのに、そういう本を参照された可能性もあると思います。

【附記】 手持ちの抱影翁の本を見た限りでは、戦前のものは、星座解説本、私小説的なもの、...などと分離しているかんじで、「天文随筆」なるものが系統的に載っているのは、戦中の『星』、終戦直後の『新星座めぐり』あたりからのようです。
2009-01-14 Wed 21:52 | URL | S.U #MQFp2i1U[ 内容変更]
>実家には滞在時間24時間未満で、~
 デンついて帰ってきたといった忙しい帰省だったようですね。

>元もとそういう心の豊かさというか素養のあった方なのでしょうね。
 『星のふるさと』の中にたびたび登場されるおばあさまやお友達の影響がかなり大きいと思われます。感受性の豊かな時代をそういう親しい人たちといっしょに星を眺めて語り合いながら過ごした豊かな経験が源流となり、天性の才能によって表現することで花開いたのではないでしょうか。
2009-01-15 Thu 11:42 | URL | かすてん #MLEHLkZk[ 内容変更]
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