
『堕天使拷問刑』 飛鳥部勝則著 早川書房
2008年 3200円
2008年に発行された『堕天使拷問刑』がこの秋再版されたので、この機会に『魔女考』と『針女』が付録としてパッケージされている書泉限定有償特典版を購入した(本体価格+1200円)。こう書くと必然的に買った様だが、ミステリーは読まないので、作品の評判も著者も知らず衝動買いだ。なぜ読みたくなったのか、なぜ予約ボタンを押したのか、コピーに引かれたのかもしれないがよく分からない。届いた本を手に取ってページをめくると二段組、おまけに475頁。この分量では、物語に入り込めない場合には読み終われないだろうとまずは弱気にさせられる厚さだ。しかし、心配は無用だった。読み始めてしまうと、3日とちょっとで読み終わった。先を急がずもう少しゆっくり楽しめばよかったと気づいたのは、もうラストが目前に迫った頃だった。物語のあらすじについては、ネット上にいくつも出ているようなので書かない。偶然かもしれないが、初版刊行後に起きた東日本大震災、福田村事件の掘り起こしで明らかになった様な普通の人による集団リンチや虐殺、言葉は通じない群衆、イスラエルによるジェノサイドを彷彿とさせる場面が散見され、今読んでみると予見だったのかとも感じられた。
全編読み終えて、犯罪の動機やトリックが解けたところですかさず、もう一度プロローグとエピローグを読み直せば、本編の流れを明瞭に定着させることができそうだ。そして、間章A 現在、間章B 現在、終章 現在は、登場人物と著者との関係やこの物語の構造を語っているかに見せるメタ構造になっている。ここまで書かずに読者の想像へ委ねて欲しかったという声も聞こえてきそうなくらいのズバリだが、これが著者の意図だとしたら、これもこれでズバリではないのか?