2007年、33年の時間を巻き戻し天文少年ならぬ天文壮年へ再入門。隊員1名。その後の変化でただいま星空は休眠状態。郷土史、草刈り、読書、ドローンの記事が多くなっています。
「軍隊」を抱きしめた町の戦前・戦中・戦後
2023-04-26 Wed 00:00
2304111.jpg『「軍都」を生きる 霞ヶ浦の生活史 1919-1968』
             清水亮著 2023年 岩波書店

 2月末に土浦のカフェで偶然著者にお会いする機会があり、本書の存在を知った。その時はお互い自己紹介をしたくらいだったが、持って帰ったチラシを見たヨメさんが俄然興味を示し早速図書館にリクエストして読んで、これは地元の人は読んだ方が良い本、特に歴史とか文化財を通して阿見町に関わるあんたみたいな人は絶対に読むべき本という感想を言っていた。ということで遅ればせながら自分でも購入して読むことにした。
 大正8年(1919)、開拓地であった台地上の阿見原(あみっぱら)で霞ヶ浦飛行場用地の買収、続いて建設が始まり、その後霞ヶ浦湖岸に霞ヶ浦海軍航空隊水上班ができ、そこへ横須賀から予科練が移駐してきて土浦海軍航空隊となり、さらに霞ヶ浦飛行場の場所は霞ヶ浦海軍航空隊となっていく。敗戦後の平和憲法の下、旧海軍跡地は軍事の町から学園都市への転換が目指されたがまもなく挫折、そこから自衛隊誘致が始まり今に至る。この1919年から1968年の間の50年史が、社会学者らしい詳細な資料発掘と聞き取りによるフィールドワークの手法によって綿密・客観的でそれでも生き生きと語られる。読みやすくはあるが表現は豊かで、筆力を感じる。
 基地問題は遠い沖縄の話、とは到底思えないくらい日常生活に近接したところに陸上自衛隊霞ヶ浦駐屯地や同土浦駐屯地はあるし、知人の中には何人もの自衛隊関係者もいるというのにこれまで関心があったとは言えない。「おそらく軍事化の”成功”は、人々が軍事基地に諸手を挙げて盲目的に賛成するようになることではない。(中略)軍事基地が、あたりまえの存在としてなじむことこそ、思考や社会関係を組み替える軍事化の一つの到達点である」という部分を読み、精神面からすでに軍事化に組み込まれかけている自分にハッとさせられた。また、本書で言及されたわけではないが、原発誘致の構造と軍事組織誘致は麻薬の魅惑相似形にも見えてくる。
 阿見町の予科練記念館の展示には物足りなさを感じたことがあるので、本書で予習してから展示を見て、見終わったら再読するという手順をお薦めしたい。阿見・土浦は戦前・戦中・戦後と軍隊の町とひとくくりのイメージで語られがちだが、決して連続ではなかったことを改めて確認した。 ともかく、最初から最後まで気付かされることの多い内容豊かなドキュメンタリー本といえる。
別窓 | 城郭・郷土史 | コメント:3
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この記事のコメント
これは重要な指摘かもしれませんね。
「軍都」と言えば、昔は旧日本軍の軍人さん、そして今は自衛隊員さんが大勢住んでいる街ということでしょう。そこでどっぷり生活してしまうとその現状を肯定してしまうので、それを時々は冷めた目で見るという適当な頃合いというのが大切だと思います。その職業にある個人は短期間で入れ替わるので、やはり商業的な意味が大きいと思います。いっぽう、そういう街から離れて生活していると、その問題自体に気づかないので、これまた話になりません。

 阿見に学園都市の候補があったことは知りませんでした。それでも、私の場合は、福知山、舞鶴、広島、江田島、土浦、阿見 と生涯軍都を身近に感じているほうでしょう。沖縄と比べられるレベルかどうかは別にして、有事になれば、沖縄も本土も同じで、沖縄にまかせて自分には関係ないと言ってられるわけではないことはよくわかっています。昨今、ここはひとつ沖縄に泣いてもらえばよい、と思っている日本人が多いようで、周りの何を見ているのかとあきれます。
2023-04-27 Thu 06:25 | URL | S.U #MQFp2i1U[ 内容変更]
本書は、社会学的な視点・手法で書かれた歴史の本ですが、私の最初の書き方では戦争史跡など文化財の本と間違われそうに感じたので、若干手直ししました。

戦前・戦中は海軍、戦後の一時期は空いた海軍の場所に学校や復興のための工場が入り、間も無く学園構想は頓挫し、陸軍(の末裔陸自)を誘致することになっていきました。阿見・土浦は戦前・戦中・戦後と軍隊の町とひとくくりのイメージで語られがちですが、決して連続ではなかったことを本書で改めて気付かされました。

家族や親類に戦死者がいない人はいないくらい被害を被っているにも関わらず、また空爆でえらい目に遭って戦争は懲り懲りと証言する人がいる一方で、軍隊・自衛隊に期待して誘致する人もいる。この麻薬の様な誘惑は原発に瓜二つに感じます。そして、地元の経済や雇用を支える基幹組織は、そこに所属するしないに関わらず、周囲の住民はあえて見ないことにするような心理が働きがちな気がします。自分もそうだと思います。
2023-04-27 Thu 07:19 | URL | かすてん #MLEHLkZk[ 内容変更]
>周囲の住民にはあえて見ない
 そうなんでしょうね。
 なんとなく、「地元の経済や雇用に貢献して利益を受けている人がいるのだから・・・(何も言わないのが無難)」ということで、それを言い訳に思考停止している人が多いように思います。その気持ちはわかるとしても思考停止には変わりなく、国費の使い道や地域の行政や経済や安全に関わることなので、ここで思考停止をしていたのでは何をやっているのかということになるでしょうね。
2023-04-27 Thu 07:59 | URL | S.U #MQFp2i1U[ 内容変更]
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