33年の時間を巻き戻し天文少年ならぬ天文壮年へ再入門。隊員1名、200mm、65mmの望遠鏡と双眼鏡で星空を楽しんでいます!
ついに登場! エキサイティングな足利成氏本
2022-11-25 Fri 00:00
2210022.jpeg『足利成氏の生涯』 市村高男著 吉川弘文館 2022年 2700円

 ここ数年、足利成氏や享徳の乱に関連する本が立て続けに出版されているが、その中に市村高男先生の本が投入されるとはなんとエキサイティングなことだろうか。
 足利成氏についてはある程度知っているので、それほどの時間をかけずにさらっと読めるだろうと思っていたのは大きな誤算だった。とにかく扱う関連領域が広範囲の上に、出典や根拠の掘り下げも深い。たとえば、これまで読んだ中では十分に疑問が解消しなかった、永享の乱〜結城合戦〜鎌倉帰還までの足取りについて、成氏が誰の庇護の下にどこにいたのかについて詳しく追っている。これまでいくつか読んだ限りでは、史料不足で詳細不明かと感じていた部分だが、けっこう足取りは追えていることが分かった。また、鎌倉帰還後の御所の位置も、発掘レベルでは未確認とはいえ、かなりの程度まで推定されている様だ。
 多くの成氏本で大きく扱われている享徳の乱の戦闘については最小限の記述に止めている。その代わりに、古河府体制、寺社との関係、自然災害、文化・芸能、朝鮮半島との関係、成氏の持病など、これまでほとんど目にすることのなかった分野の記述が非常に充実している。また、子息足利政氏への世代交代について詳しく書かれているのも、成氏で止まっていた自分にはありがたい構成だった。
 敢えて希望を言えば、成氏の生涯に大きな影響を与えたと思われる、上杉憲実や長尾景春などとの関係性がわかる文書について市村先生の分析を読んでみたかったと思うのは、自分が三者のファンだからだろうか。また、上に書いたように享徳の乱に関する記述は最小限なので他の資料との併読が必要かもしれない。
 一読しただけではとても吸収しきれない豊富な内容に溢れた好著で、成氏ファンにとっては座右のハンドブックになるに違いない。
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