33年の時間を巻き戻し天文少年ならぬ天文壮年へ再入門。隊員1名、200mm、65mmの望遠鏡と双眼鏡で星空を楽しんでいます!
享徳の乱に始まった戦国時代の終焉
2020-10-24 Sat 00:00
2009281.jpg列島の戦国史⑦
『東日本の統合と織豊政権』 竹井英文著
           吉川弘文館 2020年 2500円

ヤブレンジャーの若きアイドル竹井英文先生の新著。先にやらなくてはならないことが溜まっいても、後回しにできない期待感。ご専門の文献史学の立場から古文書を証拠にしての論考には説得力と臨場感があるだけでなく、文章が読みやすく分かりやすいという親しみやすさが加わり、いまや売れっ子歴史学者に名を連ねられ、祝着至極。

さて、本書はどうかというと、ご本人もあとがきに書かれているが、こういう通史物は事実の羅列に終始し退屈になりがちで、確かに最初の2章は目まぐるしく入れ替わる勢力争いの流れに着いていけずにいたが、有名武将たちの気持ちの表れたユーモラスな箇所を古文書から抜き出しているのは竹井氏らしい工夫だと感じられた。例えば、
・武田信玄に蒲原城をを落とされた北条氏政「余りに恐怖」
・上杉謙信に援護要請を無視された北条氏康の恨み節「御加勢一途にこれ無き故、かくのごときの儀、是非無く候」
・自分の密書を人前で回覧した太田三楽斎に激怒する謙信「美濃守の事は天罰者」
・信玄と同盟を結んだ氏政の行動に怒った謙信は繰り返し「馬鹿」と罵倒
・信玄の行動に怒った信長は「前代未聞の無道者」「侍の義理を知らず」と批判
・信玄と信長の同盟破綻を知った謙信「信玄運の極み」「信玄蜂の巣に手を指し」「信玄に汗をかかするべく候」
・佐竹方にも勝てない氏政が自分と戦うなど「腹筋に候」と侮る謙信
・謙信は信玄を追い詰めたらその足で氏政を「蹴倒す」と豪語
・謙信は兵糧の搬入に失敗した家臣を「佐藤ばかもの」と激怒
などなど、歴史ドラマではかっこいいヒーローといえども人の子、怒ったり笑ったりぼやいたりしている姿が目に浮かんでくる。
その後の3章は社会構造やインフラや経済活動に関する内容で面白くなったので引き続き読み進めそうだ。
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この記事のコメント
>経済活動
このあいだのNHK大河「麒麟がくる」で織田信長が足利義昭と京都に上る前に「1千貫」の金を用意したシーンでちょっと驚きました。金1千貫なら今のお金で300億円の超大金で織田が用意できるとは思えませんし、木造の城の床が抜けるでしょう。

 実は、これは銅銭(永楽銭?)換算で1千貫で、金で1千両相当の約1.5億円だそうで、こんどはそれっぽっちということになります(当時は小判はなかったと思いますので、ドラマでは、粒状の金地金でした)。1.5億円では1部隊の装備費兵糧くらいにしかならないでしょう。時の朝廷も幕府もよほど財政難だったのでしょう。

 面白いと思ったのは、全国規模では銅銭など信用できなかったと思われる戦国時代に、信長が金に対して銅銭換算で言っていたことです。これは話をわかりやすくするための脚色か、実際そうだったのか調べてみると面白いと思います。そういや、「永楽通宝」が幟の印にもなっていたので、銅銭に特に思い入れがあったのでしょうか。
2020-10-24 Sat 08:28 | URL | S.U #MQFp2i1U[ 内容変更]
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