2020-08-17 Mon 00:00
先日から何回か平将門の乱について書いているが、歴史系ブログに使用中の参考書をまとめたので、内容はダブルがこちらにも転載しておく。
この城は平将門が築城しましたと聞いても、戦国時代よりもかなり前のことなので、可能性を否定はしないが、重要地点であればあるほどその後の時代に再度取り立てられて将門時代の痕跡は薄れていることだろう。ということで、城郭の点からは将門は自分にとってリアリティを感じる存在ではなかったので、これまで断片的でありきたりの将門イメージしかもっていなかった。 ![]() いただいた将門煎餅を食べながら将門の本を読んでいるのだが、人物関係や事件の関連がなかなか頭に入ってこない。そんな折、NHKオンデマンドで『風と雲と虹と』総集編(前編・後編)が見られるようになっているので、これも見ながら本を読んでいる。 平将門について勉強するきっかけは、将門は平凡な開発領主だったのか?という問いについての答えを得たいからだ。将門の乱は、国衙の占拠や新皇宣言が示すように関東限定とはいえ律令国家を維持してきたシステムが奪取され、貴族社会を恐怖のどん底に落とし込んだ大事件だった。それは、武士の起こりとか、律令制の崩壊とか、荘園の始まりなどの日本史的大問題と直結している。将門の乱が分かりにくいのは、史料が少ないことに加えて、舞台となった地域の当時の地勢、戦国時代の知識をベースにできない様々な社会システム、そして古代から中世への大きな変動時期であることなどが絡んでいて、単に事件の経過を追っていくだけではわからないことだらけだからだと思う。 この機会に何冊か選んだ次のような本を読んで、将門の時代を見ていきたいと思っている。 ![]() 『中世関東の内海世界』 鈴木哲雄著 岩田書院 2005年 3000円 今回購入したものではないが、香取の内海論の先駆的研究者が、将門の乱の舞台を水上交通路の視点から記述している論文が含まれている。 ![]() 2006年 2700円 「将門記」の現代語対訳本。これはサブテキストとして買っておいた。 ![]() 『平将門の乱』 川尻秋生著 吉川弘文館 2007年 2500円 若干古い本だが、現在でも将門の乱について手軽に読める、最もよくまとまっている本の一つらしい。最初にこの本から始めるのがスタンダードかもしれない。 ![]() 『常陸平氏』 高橋修編著 戎光祥出版 2015年 6500円 巻頭の「総論 常陸平氏成立史研究の現在」は、これまでの常陸平氏についての研究史が手際よくまとめられていて、その導入部分が将門に関わる内容になっている。他の本よりも前に読んで概観し、他の本を読みながら確認し、他の本を読み終わってからまとめ的に読んでみるといいかもしれない。本書も、今回のために購入したものではなかったが、思いがけず良い本を所有していた。 ![]() 『平将門の乱を読み解く』 木村茂光著 吉川弘文館 2019年 1800円 今回将門について知りたくなって、最初に手に取ったのがこの本。本書で明らかにしたい5つの論点がプロローグに挙げられているのだが、一族内紛の経過があっさりし過ぎだし、営所が陸奥ともつながる水陸の交通の要所であること、八幡神と道真の登場、王土王民思想の指摘も受領国司への権力集中政策と言い換えられるし、大体は川尻氏の本で述べられているように感じる。ただ、冥界消息については、確かに本書が力を入れた部分だと思われる。ただ、将門の営所があったと言われる坂東市岩井の場所を終始千葉県と勘違いされていたり、筑波周辺の場所の位置関係や方位関係を誤って記述されたりしているのはいただけない。 |
それでは、ということで私は対抗して藤原純友について調べてみたいと思います。広島で学生をやっていたころ、同学年の友人に瀬戸内海の島の出身者がけっこういて、海賊の子孫と言っている人もいたことを思い出し親しみを感じます。純友の乱のみならずその後の源平合戦、戦国時代、大陸関係にも関係するので、まずは「海賊」について調べてみたいと思います。
2020-08-21 Fri 06:50 | URL | S.U #MQFp2i1U[ 内容変更]
将門の乱には、土地制度や陸奥国の権益や関東の流通掌握などの理解が必要のようで、一族の因縁とか義侠心とかで矮小化されると話が見えなくなると感じます。純友の場合は官位があって国司を務めるほどの立場での反乱ですが、律令制度末期の社会運動という点では共通性があるのだと思います。純友の乱の場合は瀬戸内海という土地ではない水上の権益の要素が加わるのが新鮮な感じです。期待しています。
2020-08-22 Sat 08:55 | URL | かすてん #MLEHLkZk[ 内容変更]
>水上の権益~新鮮な感じ
純友の兵隊というべき「海賊」とは何なのか。海賊と十把一絡げにいうが、それは、専業の漁民なのか、技能集団か、盗賊か密輸団か、傭兵集団か、無宿の漂泊民か、・・・ という疑問になりますが、個別に考えますと、このような分類ができるのは、おそらく元寇とか日明貿易よりもあとの時代のことのように思います。 純友の時代には、海賊は十把一絡げに海賊としかいいようのない、他に喩えるものがない集団だったということになるんでしょうか。そうだとすると彼らがのちに浪人や漂泊民になったとしても、それは中央政府の便宜の分類に過ぎず、本人たちの本質とは関わりのないものであることになってしまいそうです。その辺から知りたいと思っています。
2020-08-22 Sat 11:36 | URL | S.U #MQFp2i1U[ 内容変更]
陸上交通全盛の現代の生活様式からすると水上交通の評価が低くなりがちですが、これは180度頭を切り替えなくてはならないでしょうね。
2020-08-22 Sat 15:05 | URL | かすてん #MLEHLkZk[ 内容変更]
ぼちぼち勉強しますが、傭兵としての海賊は、戦国時代までだということです。石田三成・小西行長あたりが最後だとすると、朝鮮出兵と関ヶ原で終わり、鎖国になると、貿易船を襲う仕事もなくなったはずで、これは比較的クリアと思います。
それ以降は、薩長土佐の海軍、琉球貿易、海上漂泊民などがありましたが、どういうつながりなのか一般にはあまり知られていないと思います。陸地の論理では説明できないのかもしれません。
2020-08-23 Sun 07:18 | URL | S.U #MQFp2i1U[ 内容変更]
関西方面の歴史はよく知りませんし、ましてや海上についてはなおさらです。関東の水界で瀬戸内と比較できるのは東京湾になりそうです。
2020-08-23 Sun 22:19 | URL | かすてん #MLEHLkZk[ 内容変更]
>瀬戸内と比較できるのは東京湾
ちょっと本を読み始めましたが、やはり海峡や島が複雑にあるのが重要らしいです。戦略上、瀬戸内海の重要な島というのは、古代中世から近現代までつながっているそうです。江田島、倉橋島、大三島・・・とかいうと、西日本に馴染みの薄い人でも雰囲気はおわかりかもしれません。しかし、「海賊」とは何か、全国や世界に拡張できる概念か、ということについては、まだわかりません。また進んだらご紹介したいと思います。 それから、平将門と藤原純友の関係ですが、断定はできないものの、本人同士は関係無しだが、中央の対応上は心理的な影響があったというのが大方の味方のようです。純友は将門のおかげで時間が稼げたことになりそうですが、その間、朝廷側はもちろん反乱軍側の記録はあまり残っていないようです。
2020-08-24 Mon 07:28 | URL | S.U #MQFp2i1U[ 内容変更]
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