33年の時間を巻き戻し天文少年ならぬ天文壮年へ再入門。隊員1名、200mm、65mmの望遠鏡と双眼鏡で星空を楽しんでいます!
SuperKEKB初衝突成功に合わせたタイムリーな特集号
2018-05-02 Wed 00:00
1804271.jpg
『日経サイエンス 2018年6月号』 日経サイエンス社 1440円

 →日経サイエンス 2018年6月号

またまた物理ネタ。4月26日にニコ生中継されたSuperKEKB初衝突完全実況中継のまとめ回の最後で、Belle II実験プロマネの後田先生が、宣伝していいのかなぁと言いながら控えめに宣伝されているのを見ながら購入。「ビューティー粒子の崩壊を追え」はCERNのLHC加速器を使ったLHCb実験について、「スーパーKEKB始動」はKEKのSuperKEKB加速器を使ったBell II実験についての記事で、これら2本で「ポスト標準モデルへの手がかり」という特集になっている。SuperKEKB初衝突達成に合わせて組まれたタイムリーな特集といえる。
LHCb実験もビューティー(=ボトム)クォークを含むB中間子の崩壊過程を調べる実験という点で、Belle II実験ともろに競合する。実験の競合について言うならば、かつて、KEKB加速器を使ったBelle実験は、米スタンフォード線形加速器センターのPEP-II加速器を使ったBaBar実験を追いかけ追いつき追い越す過程で、初期設計を大きく超える驚異的な性能へと達した。今から始まるBelle II実験は、2011年から始まってすでにデータを集めているLHCb実験を追いかけることになる。二つの実験で大きく違うのは、SuperKEKBが電子-陽電子衝突、LHCbが陽子-陽子衝突である点。年季の入った加速器ファンだとこの組み合わせを見て、歴史上有名なJ/Ψ粒子発見にまつわる「十一月革命」を想起するかもしれない。新粒子発見先陣争いをめぐって当時あった様なバトルが繰り返されるのか、それともそれぞれの加速器の長所短所が明瞭になっている現在、異なるタイプの加速器で確認が取れてこそ信頼性が向上するということで協力関係になるのか。この先10年ほど続く実験になりそうだが、興味は尽きない。
共に短い解説だが、LHC+LHCb、SuperKEKB+Belle IIの実験方法、目指すもの、またそれぞれの長所短所などについても説明されているので、この先の数年を楽しむためのガイドになる特集と言える。
別窓 | 宇宙と物理ネタ | コメント:3
<<火星大接近まで3ヶ月を切る | 霞ヶ浦天体観測隊 | 5月の星空予習>>
この記事のコメント
B中間子崩壊研究におけるLHCb実験とBelleII実験の違いについては、一般の方向けにざっくり言ってしまうと、目的も手法も「ほとんど同じ」ということになります。でも、加速器の種類がぜんぜん違うので、専門家的に見ると「相当違う」ことになります。こういう素人さん向けと玄人さん向けで説明をまったく変えねばならないというのは、世の中ではよくあることですが、先端科学の話題でこういうことになると実にわかりにくいことだと思います。
 
 「違い」は、ご紹介の「日経サイエンス」をよく見れば書いてあるのだと思いますが、ここでは、ちょっと古いですが、ネット公開されている文献から、以下に、専門家が書いた解説を引用しておきますね。

 LHCでB崩壊にターゲットを絞って開始されたLHCb実験との比較について言及しておく。LHCb実験の有利な点は,陽子-陽子衝突によるB生成断面積の大きさにある。また,Bs中間子も大量に生成されるため,Bsを使った新物理探索に有利である。その一方で,π0やγの検出,終状態にニュートリノを含む崩壊の測定には難がある。従って,上述した多くの興味ある深い崩壊モードの多くの測定では,e+e-衝突によるBelle II実験の方が有利だと考えられる。

(飯島徹、中山浩幸、後田裕 「BelleII実験」 (高エネルギーニュース Vol.29, No.4 (2011))より)
2018-05-02 Wed 07:14 | URL | S.U #MQFp2i1U[ 内容変更]
追加情報をありがとうございます。以下のURLで読むことができます。
http://www.jahep.org/hepnews/2010/113Belle-02.pdf
2018-05-02 Wed 07:24 | URL | かすてん #MLEHLkZk[ 内容変更]
引用ありがとうございます。ちょっと古い文献なので、技術的詳細などは多少変わっているかもしれません。
2018-05-02 Wed 07:35 | URL | S.U #MQFp2i1U[ 内容変更]
コメントの投稿
 

管理者だけに閲覧
 

| 霞ヶ浦天体観測隊 |

FC2カウンター