2007年、33年の時間を巻き戻し天文少年ならぬ天文壮年へ再入門。隊員1名。その後の変化でただいま星空は休眠状態。郷土史、草刈り、読書、ドローンの記事が多くなっています。
『ファインマン語録』
2018-06-06 Wed 00:00
1ヶ月前の5月11日はリチャード・P・ファインマンの誕生日で100周年だった。そのことは知らずにファインマンの本を読んだところなのでご紹介する。

1805092.jpg『ファインマン語録』 ミシェル・ファインマン編 大貫昌子訳
              岩波書店 3200円 2016年

これは、リチャード・P・ファインマンの娘ミシェル・ファインマンが集めたファインマン語録。アマゾンのレビューには2つの正反対の意見が載っていて興味深い。
・「言葉というものは,それがどういう状況のもとで語られたのかということが重要なのだ.新聞の切り抜きみたいにただファインマンの書いた断片を,脈絡もなく,時間順序も無視して,ただ羅列してもしょうがないのではないか.ファインマンの生涯についてかなり知っている読者であっても,何のことを言っているのかなと考えさせられるところが多い.」
もう一つは、
・「この本を手に取る方は、おそらくですが既にファインマンさんの他の本を読みつくしていると思いますので、語録の形式が羅列であろうともついていけますし、それほど欠陥とは言えないでしょう(わざわざタイトルに「語録」と書いてありますし)。人間的にファインマンさんがどのような人であったのか、具体的に深く知るうえで、無くてはならない本だと言えます。」

少なくとも自分は、どういう状況で語られた言葉なのかを知るために、新聞の切り抜きを含めた膨大な原典を全部集めたいと思わないし、語録本からファインマンさんの物理学を学ぼうなどとも考えない。おまけに、ファインマンさんの他の本を読みつくしてるというわけでも無いが、自分は本書に価値を見出せる側の人間だということだけは確信できる。

語録のいくつかを引用しておく。
・理論物理学で最も重要で、最もでかい道具はくずかごだよ。
・このとてつもなくすばらしい宇宙、気が遠くなるほどの遠大な空間と時間、そして多種多様の生きものたち、数知れぬ惑星、それぞれ運動しているさまざま原子たち、これほどまでに複雑なものごとが、単に神が人間の善悪の闘いを見守る舞台に過ぎないという宗教の観点を、ぼくは信じられそうにない。この舞台はそんなけちなドラマには雄大すぎる。
・ぼくらは自らの誤りを、できる限り早く証明しようとしていることになります。進歩するにはそれしか方法が無いからです。
・それにしても試すべき法則があること自体、奇蹟のようなものではありませんか。重力の逆二乗の法則のようなルールを発見できるのは、たしかに一種の奇蹟としか言いようがありません。
・もっと気の利く機械を開発しようという研究が、盛んに行われています。(中略)それは人工知能という名で呼ばれていますが、ぼくはこの名前がどうも好きになれません。おそらくは知能の低い機械のほうが知能の高い機械よりも、うまく働くのではないでしょうか。
・次の世代のために自由を、それも疑う自由、開発の自由、ものごとをやってのける新しい方法を探求する冒険の自由、そして問題解決の自由を望んでやみません。

最後に、ファインマンさんの魅力を的確に表しているコーネル大学のマーミンの言葉を紹介しておく(トニー・ヘイ編『ファンイン万計算機科学』中で引用)。

・彼の講演なら、市の排水システムについてだろうが何だろうが、何もかも放り出して聞きに行くよ。
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この記事のコメント
>ファインマンの生涯についてかなり知っている読者であっても,何のことを言っているのかなと考えさせられるところが多い

 どうなんでしょうか。本当に「考えさせられるところが多い」ですか? そうじゃないように思いますが。

 私が感じるところでは(彼のエピソード的なことはほとんど知りません)、彼は物理だけでなく、世間常識的な意味で行動感覚が破格なので、彼の言葉の断片を読んでわからない人が彼の状況を知ったところでわかるようになるとは思えません。
2018-06-06 Wed 10:49 | URL | S.U #MQFp2i1U[ 内容変更]
>彼の言葉の断片を読んでわからない人が彼の状況を知ったところでわかるようになるとは思えません。
 確かにそうでしょうね。逆に、断片からでもファインマンらしさを感じることができます。 ファインマンに限らないと思いますが語録とはそういうものでしょう。最初のレビュアーさんは語録に何を期待されているのかちょっとわからないところがあります。
2018-06-06 Wed 17:56 | URL | かすてん #MLEHLkZk[ 内容変更]
>語録とはそういうものでしょう

 まったくそうですね。
 個別の特殊なシチュエーションに身を置かないと意味が出て来ないような言葉は、語録に載せてもあまり意味ありません。
 ファインマンさんは、才能や行動が破格であるにも関わらず、科学やものの見方の感覚は神髄をついているからこそ、一般向けに語録が出版されるのでしょう。天才、奇人、変人にしかわからず、通用しない語録でしたら、お経や呪文にすらならないと思います。

 ところで、例のファインマン・ダイアグラムですが、B-labの理論学習で取り上げることになっています。意外と素人の方にも理解しやすいみたいです。特に仮想粒子の概念が容易に理解できるのはすばらしいです。
2018-06-06 Wed 23:44 | URL | S.U #MQFp2i1U[ 内容変更]
>ファインマン・ダイアグラムですが、B-labの理論学習で取り上げることになっています。意外と素人の方にも理解しやすいみたいです。特に仮想粒子の概念が容易に理解できるのはすばらしいです。
 おや、耳寄りな情報ですね。ところで、B-LabのHPはここで良いのでしょうか?
http://belle.kek.jp/b-lab/
2018-06-07 Thu 18:15 | URL | かすてん #MLEHLkZk[ 内容変更]
>B-LabのHPはここで良い
 多少ページの更新が古いようで最近の状況はわかりませんが、Webの公開としてはここで良いと思います。

 「より高度の探索を行いたい場合」  のリンク先に、パネルのビデオがありますが、ファインマンダイアグラムの解説はないかもしれません。実習に来られた人の一部に、講義で説明しているということです。独学も可能でしょうが、自信持って理解するにはやはり講義のほうがいいでしょうね。
2018-06-07 Thu 18:50 | URL | S.U #MQFp2i1U[ 内容変更]
>実習に来られた人の一部に、講義で説明しているということです。独学も可能でしょうが、自信持って理解するにはやはり講義のほうがいいでしょうね。
 B-Labはこのネット上で完結しているのではなく、リアルな企画だったのですね。只今はあれやこれやとやることが増えてしまってアマチュア素粒子研究まで手が回りません。そのうちにじっくりと取り込める時まで待つことにします。
2018-06-07 Thu 20:58 | URL | かすてん #MLEHLkZk[ 内容変更]
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