33年の時間を巻き戻し天文少年ならぬ天文壮年へ再入門。隊員1名、200mm、65mmの望遠鏡と双眼鏡で星空を楽しんでいます!
読解力を高めるには「成熟する」ということ以外にない
2018-04-13 Fri 00:00
・内田樹:言葉の生成について
 国語科の先生の研修会での講演だそうだ。Macに読み上げて貰って耳で聞いていたが、1時間30分ほどあった。その中で印象的なフレーズを幾つかピックアップしたらこんなになってしまったが、これはほんの一部。

「今の子どもたちの語彙が貧困で、コミュニケーション力が落ちている最大の理由は、周囲の大人たちの話す言葉が貧困で、良質なコミュニケーションとして成り立っていないからです。」
「母語のアーカイブこそはイノベーションの宝庫なんです。」
「想像力が世界を創り、想像力の欠如が世界を滅ぼす。僕はそう思います。現実しか見ない人間はしばしば自分のことを「リアリスト」だと言い張りますけれど、このような人間は人間の生成的なありようについては何も知ろうとしないし、何も考えない。現実のごく一部分、自分を閉じ込めている「檻」の内側の風景しか見たことがなく、それが全世界だと思い込んでいる。そんな人間を僕は「リアリスト」とは呼びません。」
「こういう講演の後に質疑応答があると、「先生は講演で『宙吊り』にするということを言われましたが、それは具体的にはどうしたらいいということですか」って(笑)、質問してくる人がいる。「どうしたらいいんですか」というシンプルな解を求めるのを止めましょうという話をしているのに、それを聞いた人たちが「シンプルな解を求めないためには、どうしたらいいんですか」というシンプルな解を求めてくる。自分で考えてください、自分で考えていいんです。自分で考えることが大切なんです、とそういう話をしているのに、「一般解」を求めてくる。何を論じても、「で、早い話がどうしろと言っているんですか?」と聞いてくる。そこまで深く「シンプルな解」への欲求が内面化している。」
「大学生に文章を書かせると、本当に悲惨なものなんです。「定型的で整合的なことを書く」というより以前のレベルです。昔なら小学生の作文みたいなものを平然とレポートとして出してきますから。「朝起きて、顔洗って、ご飯を食べて…」それがエッセイだと言うんです。」
「授業がわからないのは、先生の責任だと思っている。もっと分かりやすく話して下さい、私たちにもわかるように噛み砕いて話してください。そういうことを要求する権利があると思っている。骨の髄まで消費者マインドがしみついている。」
「今の日本社会は、自分自身の知的な枠組みをどうやって乗り越えていくのか、という実践的課題の重要性に対する意識があまりに低い。低いどころか、そういう言葉づかいで教育を論ずる人そのものがほとんどいない。むしろ、どうやって子どもたちを閉じ込めている知的な枠組みを強化するか、どうやって子どもたちを入れている「檻」を強化するかということばかり論じている。」
「文学の有効性は功利的、世俗的なものではなく、もっと根源的なものだからです。それは人間を今囚われている「檻」から解き放つための手立てなんです。」

今夜の観測:β Lyr3.3等。
別窓 | 大震災・原発・社会 | コメント:5
<<テルミニのお嫁入り | 霞ヶ浦天体観測隊 | 些細なことを自画自賛して優越感を盛り上げる涙ぐましい劣等意識>>
この記事のコメント
原発をどうするのか、高齢者医療をどうするのか、先端治療技術をどうするのか、というような問題は、科学と技術の観点から評価し予想することは可能ですが、現実に最終的にどうするかは、科学や政治で正解は決まらず、哲学や文学によるしかない、ということを、科学・技術の専門家が言っていました。答えの出にくい問題こそ、哲学や文学を学ばないといけないわけで、そんなのが簡単にわかるはずはないですよね。せっかく大勢の若い人が大学に行っているのですから、そういうことを勉強してほしいと思います。
2018-04-13 Fri 19:14 | URL | S.U #MQFp2i1U[ 内容変更]
過日参加した歴史関係の講演会の折、締めの挨拶をされた方が「人文学科への風当たりが強い折り、他の人文学科はそうかもしれませんが、〇〇大学は違うと宣伝してください」みたいなことを言っていました。これでは他の人文学科はやはり不要だと言っている様なもので、たいへん見識の無い発言だと憤慨したことがあります。当事者がこんなレベルだから足元をすくわれるのだと感じました。自然科学系の人の方が余程人文系の重要性をわかっている様に思います。
2018-04-13 Fri 20:41 | URL | かすてん #MLEHLkZk[ 内容変更]
>見識の無い発言
 そうですね。
 自然でも人文でも、基本的に、どんな研究が将来どれほど役に立つかはわからないので、どんな研究をしていても悪いとはいえないのですが、この点で、人文研究は多少割りを食っている気がします。

 自然系でしたら、最先端研究の流れに乗っている研究と、そうではない研究があり、前者は戦略的に重要だと予算が付き、後者は予算が付かなくても「独自の視点の研究」とか「地道な研究」とかそれなりに評価がされます。

 人文系はどうなのでしょうか。時流の流れに乗っていない研究は、ものによっては、時代遅れとか独りよがりの趣味の研究とか揶揄されるということはないのでしょうか。私などもそう思うような研究がありますが、門外漢だしやって悪いことはないと思うので何も言いませんが、同業者なら批判もあるのではないかと思います。
2018-04-14 Sat 08:33 | URL | S.U #MQFp2i1U[ 内容変更]
>人文系はどうなのでしょうか。時流の流れに乗っていない研究は、ものによっては、時代遅れとか独りよがりの趣味の研究とか揶揄されるということはないのでしょうか。
 人文系の学問はなまじ日常言語や日常体験に重なる部分があるので、批判をしやすいかもしれません。その点、自然科学系の学問は日常から距離がある分、カモフラージュはしやすいでしょう。
2018-04-15 Sun 18:15 | URL | かすてん #MLEHLkZk[ 内容変更]
>自然科学系の学問は日常から距離がある
 少なくとも最近の日本の自然科学系の人は、あの分野は時代遅れだと言うことはあっても、研究する必要が無いとまでは言わないと思います。かつてはそういう人もいましたが、けっこう古いものが見直されたりしますので、うかつなことは言えなくなりました。

 人文分野も古い見方が復活したりするようなことがあると、批判しにくくなるものと思います。

 
2018-04-16 Mon 20:47 | URL | S.U #MQFp2i1U[ 内容変更]
コメントの投稿
 

管理者だけに閲覧
 

| 霞ヶ浦天体観測隊 |

FC2カウンター