2016-02-14 Sun 00:00
![]() 本家のサイト(右写真)。 ・Einstein's gravitational waves found at last Nature。 ・LIGO-Virgoの重力波発見に関するKAGRAグループからのコメント 東京大学宇宙線研究所KAGRA計画代表、梶田隆章所長のコメント。 ![]() ・2016年02月12日(金) ・2016年02月13日(土) その他、山のような紹介記事へのリンクはこちらから。解説記事によれば、検出装置の原理はマイケルソン・モーリーの実験と同じようだ(右図は毎日新聞より)。捉えたのは実はエーテルだったりして? 重力場の振動を直接捉える技術が確立されて、いよいよ次の目標としてダークマターを直接捉えることが現実味を帯びてきた。 |
ついに重力波が観測されましたね。
みゃおさんの外縁天体の撮影成功があったので我々による掩蔽観測も可能ではないかと思いましたが、こちらの方面もヒッグス粒子の発見、重力波の発見と続いたので、ダークマターの直接的発見も近いのではないかと思います。 ここでセミプロの方向けに論文サイトも引用させていただきます。一般向けの解説も付いています。 この論文は、出版者の米物理学会あるいは著者の好意によって無料でアクセスできると思います。(Read PDFをクリックして下さい) http://physics.aps.org/articles/v9/17
2016-02-14 Sun 08:45 | URL | S.U #MQFp2i1U[ 内容変更]
ほんと、規模が違うだけで、マイケルソン・モーリーそのまんまですね。
専門家のS.Uさんやかすてんさんに伺いたかったのですが… この重力波検出器には指向性はあるのでしょうか?素人頭で考えると、直交軸それぞれの方向に近い向きの重力波は検出しやすいけれど、真上からやってくる波や、各軸に対して斜め45度にやって来ると干渉ズレが起きない(またはズレが各軸で同量になる)ため、検出できないのでは?と思いました。 仮に指向性があるとすると、本当はレーザー軸を立体構成にするべきなんでしょうかね?(そんな建築できないと思いますが…)。あるいは地球面の至るところに作って、得意な方向を多様化するとか? >専門家
加速器や宇宙線の粒子観測ならともかく重力波観測はまったく専門でないです。天文測量に関する問題ならみゃおさんのほうがお詳しいと思いますが、間違いを恐れず論文見ながら、お答えしたいと思います。 答えは、別の論文、 https://dcc.ligo.org/public/0122/P1500218/012/GW150914_parameter_estimation_v13.pdf に載っていると思います。この論文の図4に、恒星天球上のだいたいの方角が描かれています。 ちゃんと読まずにお答えしますと、 重力波観測装置は、縦横のアームの長さの差を測っているだけなので、単体では(方向が識別できるほどの)指向性はありません。また重力波は四重極波なので、向きに依らず縦横の伸縮量はいつも同じではないかと思います。 信号感度はおっしゃるように方向によって変わると思います。 ところが今回の場合は、米国の2点で測定しているので、波形の時間差から、まず2つの観測所を軸とする一つの円周上にかなり正確に追い込めます。測量的にはこれで終わりだと思います。(※) そのほかに、観測データは二重ブラックホールの周期とその変動、さらに強度の変動のデータを持っていますので、重力理論から、2個のブラックホールの質量がかなり正確に測定できます。これから発生する重力波の総強度が計算できます。 発生源の強度と地球での「照度」が測定できたので、地面に対する角度とブラックホール系までの距離の2元方程式になります。ここで、もう一つ別の情報があればすべて解けることになりますが、あとはどうするのかよくわかりません。精度は悪いながら ゼロでない red shift は測定されましたので、それからもっともらしい距離の範囲で考えるのかもしれません。精度はよくないものの信号強度からの距離は論文に出ています。ブラックホールの自転方向の確率分布も出ています。 このへんの発生源の確率分布関数を適当に仮定してベイズ統計を適用して観測と合わせると何らかの確率分布は出るものです。 地球上に3箇所以上の観測所があればこの問題は解決しますので、KAGRAが動けば大丈夫ですね。 (※)追加 2つの観測所で直角アームの方向を変えておけば、強度や周期の変化がある場合は、原理的にはもう1つ両観測点での位相のずれの情報が手に入ることになると思いますが、それは論文ではあまり議論されていないようです。Google Earthでみると両観測所でのアームの方向はほぼ揃えてあるようです(南北に近いアームは逆を向いていますが)。検証のために位相をそろえることを重要視したのかもしれません。
2016-02-14 Sun 15:09 | URL | S.U #MQFp2i1U[ 内容変更]
説明ありがとうございます。「四重極波なので向きに依らない」というのがいまひとつ理解できない点です。波として観測される軸の1つは時間軸では無いと言うことでしょうか?
「直角アームを地球面の様々な方向に分散させ、互いの時計同期と相対位置把握、地球自転公転の把握ができれば、天球上のあらゆる方向からの重力波を検出できそうだ」というイメージを持っています。それが今回は米国二ヶ所で観測できた訳ですよね。 いっぽうこれと別に、既知のブラックホールの天体観測で得たデータから質量や振る舞いを予測、ひいては「重力波が来るとしたらこんなふうだ」という理論値を算出→これが米国二ヶ所の観測と一致した、という理解で間違いないですか? トンチンカンな質問だったかも知れませんが、ニュースで最初に思ったのは、こんな偶然があるだろうかと言うことでした。重力波って常時出ているのか、一時的なのかも不明で、それがLIGOにうまく引っかかったなんてあり得るのかという疑問でした。この疑問から「検出器の指向性」の疑問が湧いて、「日周や年周で常に方向が変化する直角アームが、とある方向にあるブラックホールの波を受けられるのだろうか?」という質問に発展したのです。アームの向きにより検出が左右されるなら、例えば「観測時間が6時間ずれていたら検出できなかった」こともあり得ますね。(ま、何日も連続運転してるでしょうからどこかで引っかかりますが…。) VLBIなら既知天体を各地のパラボラで一斉追尾すれば良いだけですが、地上に据えられたLIGOやKAGRAは向きの問題がないのだろうか、というのが質問の本質です。くどくてすみません。ふたつの論文も読みますね。 >四重極波~波として観測される軸の1つは時間軸では無いと言うことでしょうか?
これは正しい用語ではなかったですね。正しくは、重力波は四重極振動(成分から放射され受信される)と言うべきだったかもしれません。もちろん四重極振動は振動なので、空間的には2次元で時間的には1次元でぶよぶよと変形する振動をするイメージですが、一般の物体は3次元なのでいろんな方向の振動のモードがあり得ます。 いずれにしても、重力波観測装置には感度の指向性があるが、測定できるのは両アームの長さの差だけなのでそれだけからは飛んできた方向はまったくわからないという結論は正しいと思います。 四重極振動の単純なモードは90度離れた方向は位相が逆で振幅は同じと思ったので、縦横の振幅は同じと言いましたが、一般に重力波は進行方向に偏極するのでこれは正しくないかもしれません。縦横のアームで常に同じというのはとりあえず撤回させていただきます。 重力波も基本的には電波と同じように進行方向に垂直に振動し、発信源の振動面に平行に偏極するのだと思いますが、電波が二重極であるのに対し、重力波は四重極で90度ごとの対称性がありかつ2方向の偏極があります。これは光子のスピンが1で重力子のスピンが2であることに対応します。 >いっぽうこれと別に、既知のブラックホールの天体観測で得たデータから質量や振る舞いを予測、ひいては「重力波が来るとしたらこんなふうだ」という理論値を算出→これが米国二ヶ所の観測と一致した、という理解で間違いないですか? 今回の場合はその通りです。ただし、重力波の放出における強度の変化の図は一般相対論だけで原理的に計算で決定可能のはずです。 一般的には、こういう時間的に強度が変化するような現象の場合は、3箇所で測定すると時間差がとても正確に測れるので、発生源の方向は時間差測定だけで相当正確に決まるのではないかと思います。 距離を測定するためには信号源の強度の推定が必要で、これにはおっしゃるように重力理論と発信源と受信機の方向を含めた様々な仮定についてシミュレーションをして最適解を求めるとそれが求まり、距離も求まるということになると思います。 2つの観測所で観測される位相差を角度分解能に生かせればVLBIと同じ原理になると思いますが、今回はそういう解析はまだ行われていないようです。位相が揃っている方がノイズから信号を検出器するには有利ということもあるかもしれません。観測装置が増えてきたらそういうこともやられるのかもしれません。 論文をお読みになって関連することが書いてあればまた教えて下さい。私は、Phys. Rev. Lett.のほうは全体を斜め読みしましたがテクニカルな所はついていけませんでした。
2016-02-15 Mon 08:27 | URL | S.U #MQFp2i1U[ 内容変更]
> 一般に重力波は進行方向に偏極する
S.Uさん、自分がどこで引っかかってるのか分かってきた気がします。 ぼくは「進行方向にしか偏極しない」と限定的に思い込んでいたようです。この表現が正しいか分かりませんが「検出器に対して+modeの位置しか検出できない」と。仮に「×mode」になっても、検出器は位相ズレを見破れないのではないかと。これが誤解(?)の元だったかも知れません。 そうではなく、四重極振動で時間軸含め直交するあらゆる振動が考えられるんですね。あっ、でもそうなるとスプリッター位置に戻ってきたとき、アーム長変化に伴う変調だけでなく、厳密にはビームと直交する向きにも「場」が揺さぶられることになりませんか?もしそうなら、長さズレだけの単純なコヒーレント観測では済まなくなりそうですね。(「面」+時間軸として検出する必要がある?) 論文ザッと読みましたがまだまだ自分の理解が追いつきません。防振装置が面白そうなので「quadruple-pendulum system」に絞っていろいろ調べてみようと思います。 3箇所での測定で時間ズレを考慮すると位置が正確に決められる、という理屈はよく分かります。実際、論文中に出てるH1とL1のグラフも、一見同じ形に見えても、時間方向に見ていくと微妙なズレがあるって分かりますね。地球自転に伴う変化がどれほどなのかが気になります。逆に、以前神岡で超新星からのニュートリノを見つけたとき、「なぜ1ヶ所のみの観測で、特定の超新星だと位置を決められるのか」と疑問に思ったことを思い出しました。 さすが、みゃおさん、天体からの信号の伝搬に関しては「うるさい」ですね。わたしも同様に「うるさい」んですが、いかんせん重力波は観測しようと思ったことすらないので、ほとんど理解できていません。好きは好きなのでもう少し議論させていただきたいと思います。私が引っかかっていて明瞭なお答えができないのは、みゃおさんが引っかかっていらっしゃるところと同じだと思います。
おっしゃるように重力波は空間3次元・時間1次元の振動と見なせますが、波の進行方向だけは特別で横波です。+モード、×モードというのは波の進行方向を向いたときの話ですよね。この2成分の間の位相差は任意であると思います。真空中では両者の伝搬速度は光速で周波数も同じだと思います。+、×のそれぞれは90度の回転対称性を持っています。これを任意の位相差で重ね合わせても90度の回転対称性は失われないとはじめ考えました。 ところが特定の直角アーム型の重力波検出器を考えると、それは2方向しか測定できないので、特定の方向の四重極成分だけを抜き取ることになりますが、この検出器が重力波のやってくる方向に垂直なら90度対称性は維持できますが、アームの方向と重力波の進行方向が半端な角度を持つと四重極成分といえども90度対称性が失われるのではないかと考えました。ここで私はわからなくなりました。 これは、重力波が光速で伝搬することと関連していて、電波に縦波がないのと同じです。やはり、進行方向の座標系を意識しながら計算する必要があり、一般的に3次元から1モードだけ取り出したと考えてはいけないのだと思います。 一般的に考えるならば、偏極も含めた独立成分の数を考えると面白いと思います。電波の場合はX振幅,Y振幅、位相差の3つですよね。重力波の場合は、+に正負があり、×に正負があり、それぞれに位相差があって7つあるように思います。(スピン×4-1となると思うのですが間違っているかもしれません) ところが、実際に測定できるのは、距離差の大きさ1つだけですからまあ何も決まらないということでしょう。7台のアームの方向が違う検出器があると決まるのかもしれません。(これが正しいかどうかわかりませんが、素粒子のスピンに依存する散乱振幅を散乱強度を測る実験で決定するときはこういう考え方をします。) 一般に、光も電波も重力波もどっちから飛んできたかというのを検出するのは困難です。写真撮影で光の飛来方向が簡単にわかるのはレンズという便利な物があるからです。電波の場合はアンテナの向きを変えないといけないし(あるいは干渉計)、X線の場合でも「すだれコリメータ」という画期的な発明が必要でした。高エネルギーのガンマ線やニュートリノを検出する場合ははじき飛ばされる電子がもとの方向を憶えていてくれるので助かります。電子の飛ぶ方向の検出は容易ですね。
2016-02-15 Mon 15:47 | URL | S.U #MQFp2i1U[ 内容変更]
> 2成分の間の位相差は任意
> 直角アーム型の重力波検出器を考えると、それは2方向しか測定できない > 特定の方向の四重極成分だけを抜き取る そうそう、ここなんですよ。本当に「2方向しか測定できない」、つまり極端な指向性があるのか、それとも、もう少しレンジが広くできるような仕掛け(理論)があるのか、気になったんです。「対称性」とは波自身が持ってる性質なのであって、LIGOにとっては「検知的に非対称かも知れない」任意の位相差を想定しなければならないはずではないかと。 地上にどーんと設置された検出器を見ると、多くの人は「不動の存在」と思い込むかも知れません。でも、自分が重力波震源にいることを想像してみてください。そこから見えるLIGO二施設・合計4本のアームは時々刻々すごいスピードで向きを変えて見えるはずです。自転、公転、銀河の動き等々…。それ自体が微少ながらも無視できないred shiftやblue shiftを起こすような「振動」と言えるかもしれません。その状況で、自分(重力波源)が放った波とアームとの向きが綺麗に揃って、「抜き取ってもらえる」瞬間はあるのだろうか…ということです。(もっと言うと、宇宙空間は多数の重力波が飛び交っているのだから、よほど近場でない限り特定困難かとも思います。)地上の巨大設備は特定の向きを想定して作る訳ではないでしょうから、この問題をどうクリアしているのか興味があった次第です。H1とL1が「斜め45度の位置関係」とかだったら、もっとすんなり理解できたかも知れませんね(笑) 毎度毎度コメント欄を長くしてしまい、申し訳ありません>かすてんさん、S.Uさん。そして、愚問におつきあいくださり本当にありがとうございます。 みゃおさん、こちらこそ勉強の機会になりました。ありがとうございました。
かすてんさん、コメントが長くなりすみませんでした。 もう一言だけ・・・ みゃおさんは指向性がきついのではないかというご心配をお持ちかもしれませんが、レンズやパラボラのような収束機構を持たない直線状のアンテナならそんなに強い角度依存性は一般的に出ないと思います。たとえば、電波のダイポールアンテナは 1+cos^2θ (双極子放射)などの依存性になりますが、四重極子のアンテナならせいぜい sin^4θとか1+cos4φ 程度で済み鋭いピークにはなりません(と思います)。
2016-02-15 Mon 21:14 | URL | S.U #MQFp2i1U[ 内容変更]
お二人の議論についていくのがたいへんだったのでしばらく静観していましたが、あらためて最初から読み直してみましたが、やぱりよくわからないです。
でも、重力波初検出のニュースが出た直後に専門サイト以外でこのレベルで解説していただけてるところはそうそう無いと思い、おふたりに感謝します。
2016-02-17 Wed 21:18 | URL | かすてん #MLEHLkZk[ 内容変更]
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