33年の時間を巻き戻し天文少年ならぬ天文壮年へ再入門。隊員1名、200mm、65mmの望遠鏡と双眼鏡で星空を楽しんでいます!
百景社 土浦の夜を『銀河鉄道の夜』へ変える演劇の力
2015-06-14 Sun 00:00
土浦は痩せても枯れてもやはり街だなぁと感じるのはこういう体験ができるからだ。

1506122.jpg6月8日の夜、劇団「百景社」の『銀河鉄道の夜』の公演を見てきた。[右写真はキララちゃんバスブログよりお借りした]
2000年からつくばを中心に活動していた「百景社」が土浦真鍋にアトリエを作りここを本拠に活動を始めたのが2013年。2014年に『マクベス』公演をした頃から気になっていたのだが、ようやく見に行く機会がやってきた。それが『銀河鉄道の夜』とは、星好きにとってはまさにお誂え向きの舞台設定・演目ではないか!

開演30分ほど前に受付を済まして開場を待つが、集まって来た人たちを見ながら、普段土浦のどこにいるの?と思うくらい若い人が多いのに驚く(我々3人が最高齢みたい)。前売り2500円、当日2800円、2週間前上演の『シンデレラ』とのセット券4000円、18歳以下500円というのは気軽に演劇を楽しめるありがたい金額だが、この収入だけでは厳しいだろうなと想像してしまう。

1506121.jpg夜19時、主宰者・志賀亮史さんの開演の挨拶に続く一声「山本さんお願いします」。ジョバンニ役の山本晃子さんが「はい!」と言って舞台中央の机にいきなりうつ伏せになって劇が始まった。そしてそのまま、午后の授業、活版所、家、ケンタウルス祭の夜、天気輪の柱のエピソードが進む間延々寝続け、銀河ステーションで列車が動き出したころむくりと起き上がる。そこから白鳥の停車場、プリオシン海岸、鳥を捕る人、切符改札と進み、鳥捕りが去るのと入れ替わりに難破した少女の一行が乗り込んでくる。この章は長いので快速運転でエピソードのいくつかを飛ばすという演出で文庫本80頁が1時間30分に収まる。遠くで鳥を捕まえていた鳥捕りが突如座席に座ってるという早業、押し葉になった鷺を見せるところ、雁を食べさせるところなど、特撮でもないと表現できないような部分の演出は秀逸だった。また、配られたチラシの中の『銀河鉄道の夜』路線図には、エピソードや停車場と星座との位置関係が描かれていて、これも面白い資料だ。

「みんながこうであると思い込んでいる世界の仕組みを見直して、新たな想像力で世界を作り直そう」とする宮沢賢治の想像力と演劇の想像力とが入り交じった不思議な旅という志賀さんの意図した創造空間が私たちの目の前に現れていたと思う。たった4日間、4回の公演だけでは勿体ないと感じる良い劇だった。いつかまたアンコール公演をしてもらいたい。

次回以降の公演もぜひ見に来たいと思うが、今後は土浦の街中に出て新しい接点を作りたいと別のところ(常陽新聞「ひと」欄)に書かれていたのに興味を惹かれる。百景社、しばらく目が離せない存在となる夜だった。
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