2007年、33年の時間を巻き戻し天文少年ならぬ天文壮年へ再入門。隊員1名。その後の変化でただいま星空は休眠状態。郷土史、草刈り、読書、ドローンの記事が多くなっています。
リング星雲M57の中心星と「13等ニセモノ説」
2013-07-18 Thu 00:00
1307171.jpgこと座のリング星雲M57は最も有名な惑星状星雲のひとつで、太陽程度の質量の恒星がその終焉にガスを放出してできたと考えられている。そして、その恒星は白色矮星となり中心星として輝いている。[左写真はNASA, Hubble Heritage Image Galleryより]

このように有名なM57星雲だが、いつの頃からか実に不思議な言い伝えが付け加えられている。それは、

M57の中心付近には13等級くらいの中心星とは別の星がある

というもので、私もどこかで目にした記憶がある。おそらくみなさまも同様と思われる。

それでは、本当の中心星はどれなのか。ネットを探せば矢印でこれぞ中心星と示した画像がすぐに見つかると思ったが、豈図らんやそのようなものは出て来ない。これは気になるというわけで、先にアップした7月3日の記事のコメント欄でS.Uさんとともに少し調べてみたので、それを以下に整理しておく。

いくつかのページでの中心星に関する記述内容を以下にまとめてみた。

多くのページに共通している記述:
・中心星は白色矮星である
・中心星は穴の中に見える
・中心星は15等級である

AstroArtsの記述
・中心付近に中心星ではない13等級の星がある
・中心星は中心から1'(0.1'の間違いか?)西にある15.4等の星である
 [追記:既に修正済み]

日本語版Wikiの環状星雲についての記述
・30cmで中央部に13等の星が見えるが、これは中心星ではない
・中心星(15等級)を見るには最低でも口径30cmの望遠鏡を必要とする。

現時点では、AstroArtsと日本語版Wikiが「13等ニセモノ説」を採用していることが分かった。

ここで、根本的な疑問:
・そもそもリングの中に13等級の星はあるのか?

1307132.jpgそれでリングの穴の中の星の光度はどのくらいなのかを調べてみた。右写真は透明度の悪い中で撮影したものだが大まかな光度比較は出来ると思う(等級はTheSkyXProより)。う〜ん、どう見ても13等級の星がリングの穴の中にある様には見えない。また、UCAC4の恒星リストをチェックされたS.Uさんによると「リングの中心にとても近い15.9等の星がいちばん明るい」とのことだった。

ということで、リングの穴の中で一番明るいのは15等級の星で、少なくとも13等級の星は無いという結論に至った。では、ホンモノの中心星は中央の星と考えて良いのだろうか。おそらくそうなのだろうが図示されたものが無いので曖昧さは残ったままだ。

さて、お騒がせな「13等ニセモノ説」の歴史については今後の調査課題にしようと思う。と、今夜の記事を書き終えた直後にS.J.オメーラ『メシエ天体カタログ』に関連を思わせる記述を発見。これについては次回の記事にする。
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この記事のコメント
 うーん。この問題は、茨城の納豆の糸の如く、伸びるばかりで決着がつきませんね。

 実は、今日のかすてんさんの記事の末尾を読んで、私もひらめいて、自分が以前に仕入れた13等ニセモノ説の知識のソースを、自分の本棚に見つけることができました。(あくまでも、世の中のプライマリソースではなく、私の知識の直接のソースということにとどまりますが)。それは、藤井旭著『全天 星雲星団ガイドブック』です。持ってらっしゃいましたらぜひご覧下さい。とにかく1985年に印刷されているということがわかりました。
2013-07-18 Thu 07:47 | URL | S.U #MQFp2i1U[ 内容変更]
次の記事にする予定の内容ですが、原書が1998年に出版されたS.J.オメーラ『メシエ天体カタログ』には次の様に書かれています。

「ガスの輪の中で一番明るい星は13等で輝いており、中心からちょうど1′東、一番外側の縁からは20″のところに位置している。また、14等星がリング星雲の南西側の端のちょうど内側に位置しており、中心星とまちがわれやすい。たいていの恒星カタログでは、青い矮小な中心星は15等星であると記載されている。しかし、その明るさについては議論がかわされている。」

以下は、1′東とか20″にある星についてTheSkyXProで計った長さを参考に作った図です。オメーラは「ガスの輪の中で一番明るい星は13等」と書いていますが可視光や眼視ではとてもガスの輪の中には見ません。特殊な波長で写った写真を元に語っているようで混乱します。
http://blog-imgs-55.fc2.com/k/a/s/kasuten/1307181.jpg

>藤井旭著『全天 星雲星団ガイドブック』

懐かしい本ですね。残念ながらもう手元にはありません。
2013-07-18 Thu 09:58 | URL | かすてん #MLEHLkZk[ 内容変更]
中心近くに紛らわしい13等星があるという都市伝説のお陰で、せっかく、M57の写真を撮っても、ニセの中心星しか写らないとがっかりする人が続出のようですね。由々しき問題かも。
HSTの画像をみても、紛らわしい星なんて無さそうですが?
HSTの画像は、撮った波長が特殊そうで信じられない?

なお、googleったら、眼視で中心星を見た方の記述を見つけましたが、30cmでも、なかなかの難物のようですね。
2013-07-18 Thu 12:53 | URL | meineko #-[ 内容変更]
meinekoさんもやはり都市伝説と思われますか。どなたかこの星にお詳しい専門家の方をご存知でしたら、ぜひ誤解を解く説明をしてもらえないでしょうか?中心星はこの星ですと図示していただくだけでもすっきりします。
2013-07-18 Thu 14:12 | URL | かすてん #MLEHLkZk[ 内容変更]
M57の中心星ってのを頼りに探していたので、苦戦していましたが、白色矮星のカタログをみたら、あっさり、見つかりました。
http://www.astronomy.villanova.edu/WDCatalog/
で、右から、NGC6720を選んで、finder chartで、見つかります。
2013-07-18 Thu 16:57 | URL | meineko #-[ 内容変更]
>星団星雲ガイドブック
では、初版1978、7刷1985のこの本から引用します。よく売れた本だと思います。

「リングの中には二つの星があります。一つは13等星ですから10cmから見えますが、中心星の方は眼視光度15.5等、写真光度は14.7等で、小口径ではまったく見ることができません。」

 さらに、問題の星が結構明るく写っている写真が掲載されています。この写真だったら13等台に見えないこともないです。103aEによる写真で、撮影されたのは私の存じている茨城県の方です。

 ひょっとすると、星雲への反映の関係で、特殊なスペクトルを持っているとか変光するとかあるのでしょうか。

 meinekoさん、ご参入ありがとうございます。
白色矮星のファインデングチャートによると素直に中心の星でよいようですね。
 やはり15~16等のようです。問題はこれが13等として扱われたことがあるかです。meinekoさんは全天星表にお詳しいのではないかと思いますが、私の思うには、GSC以前の星表は13等より暗くて特に星雲に近い星は信用できず、参考になるのは、20世紀末のUNSO-何とかあたりからではないかと思うのですが、いかがでしょうか。1980年頃以前の古い星表に誤った星のデータが載っていてそれに騙されたということがありうるでしょうか。(私は、GSC以前に13等まで載っている全天星表があったかどうかは存じません)
2013-07-18 Thu 17:33 | URL | S.U #MQFp2i1U[ 内容変更]
うわ〜い、meinekoさん

ありがとうございます。すご〜い、やはり素直に真ん中の星ですね。いろいろな検索引き出しをお持ちのmeinekoさんならではの一発回答でした。

S.Uさん

上に書いたオメーラさんの13等星の記述は何を言ってんだかわけがわからないので脇に置くとして(日本語訳の間違い?)、原書が1978年発行のバーナム Jr.さんの蘊蓄本『星百科大事典』には13等星の話はまったく出てきません。S.Uさんがお調べの各国Wikiにも「13等ニセモノ説」は無いとの事ですので、これは日本限定の都市伝説と考えて良さそうですね。『星雲星団ガイドブック』は当時天文を志すすべての人が見たといえる大ヒット本ですので、103aEによって13等級に膨らんだ中心星を見て本当は15等級なので、13等級のこれはニセモノという錯誤が浸透して行ったのでしょう。なお、バーナム Jr.さんの本によると、中心星は変光星ではないかという議論は昔からある様です。今も続いているかは分かりませんが。

ところで、星団星雲ではなく『星雲星団ガイドブック』ですよね。
2013-07-18 Thu 19:58 | URL | かすてん #MLEHLkZk[ 内容変更]
>『星雲星団ガイドブック』
 これが正しいです。失礼しました。
 かすてんさんのお説におおむね賛同いたします。

 オメーラさんのいう13等星は、中心からちょうど1’東ということで、かすてんさんの写真にも写っているリングの「外側」にある明るい星のことではないでしょうか。これを中心星だとはだれも思わないでしょうが、

 オメーラさんがリングの外側の13等星を、リングの内側にあると誤解した。-- 中心から1’東なら明らかにリングの外に出るがそれに気づいていないので
 →→
 それを読んだ人が、中心星が明るめに写っている写真を見て、15等なのに、13等くらいだと思った。それで、リング内にあるいちばん明るい星は13等ということになった。
 →→
 いっぽう、プロの書いた論文や白色矮星カタログでは、中心星は15等となっているので、こりゃ別に15等の本当の中心星があるんだな、と日本の誰かさん(不明)が間違って考えた。

 これで、つじつまが合うように思います。

(附記)
あきません。これだけでは、まだつじつまが合いません。オメーラさんのメシエ本は原著でも『星雲星団ガイドブック』より新しいですから順序が合いませんでした。オメーラさん以前にリングの内と外を間違えた人がいるのではないでしょうか。アストロアーツの妙な1’の記述もあるのでこの方向が正しいように思うのですがね。

2013-07-18 Thu 20:24 | URL | S.U #MQFp2i1U[ 内容変更]
この際、私たちの謎解きの資料からオメーラさんの記述は外しましょう。しかし、日本国内のM57中心星13等ニセモノ説に混乱を付け加えたという点で歴史的価値はありそうですので次回の記事には予定通り登場させます。
2013-07-18 Thu 22:01 | URL | かすてん #MLEHLkZk[ 内容変更]
かすてんさんの次の分析をお待ちします。

オメーラさん封印はよいとして、前回の(附記)に補足をさせていただきますが、アストロアーツの「リングの中心付近(1'東)に13等級の星がある」は、オメーラさんの日本語本から来ていると思います。どちらも、リング中心から東に1'がリングの内部であるという同じ誤りを犯していますので、いわゆる「不正解のカンニング」のスジです。
2013-07-19 Fri 07:52 | URL | S.U #MQFp2i1U[ 内容変更]
>「不正解のカンニング」のスジ

この二つには「間違った認識が共通」という、カンニングを疑われてもしかたがない点がありますよね。

あと、M57はだいたい視直径 80"×60"くらいに記述されています。眼視だとそのくらいかもしれませんが、写真だとガスが濃く写るのでその倍の大きさでもおかしくありません。最近は眼視よりも写真で見る人が多いでしょうから、この数字を基準にすると長さを小さく見積もってしまうかもしれません。
2013-07-19 Fri 08:19 | URL | かすてん #MLEHLkZk[ 内容変更]
ローエル天文台Skiffさんが、M57の周りの星の等級について調査した結果をまとめて居られました。
何かの参考になれば?
http://www.hacastronomy.com/m57.htm
2013-07-19 Fri 11:26 | URL | meineko #G2HzhJd6[ 内容変更]
>M57の周りの星の等級

ありがとうございます。記事の中の図で使った光度はTheSkyXProからピックアップしたもので、小数点以下は違いがあります。
2013-07-19 Fri 23:56 | URL | かすてん #MLEHLkZk[ 内容変更]
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