2013年の2大彗星の第1弾、パンスターズ彗星 C/2011 L4(PANSTARRS)。発見時の予想程には大きくならなかったため、にわか天文ファンには期待はずれだったかもしれないが、最大光度0等に達し、朝夕の薄明の空でも写真に写り、大彗星だったことには違いない。
[時間経過は上から下へ]
★■2013-03-05

近日点通過まであと5日。今日の日没時には高度はわずか2度。光度も2.5等ほどなので双眼鏡でも見えるはずは無いが、近日点通過時点からの本格的観望に備えて観測予定地へ行って眺めて来た。
■2013-03-06

今日の日没時高度は3度。5度以下は春霞か雲かに覆われているので、これではたとえ金星でも見えはしないだろう。明日は日没時5度、近日点通過日は10度になるので条件は良くなって来る、はず。
■2013-03-08

パンスターズ彗星が日本の夕空に登場する日が目前だが、ここへ来て空はすっかり春霞と黄砂に覆われてしまった。
[右図は気象庁の黄砂予報(3/8~3/11の15時)]

■2013-03-09

今日も春霞と黄砂が酷かったが昨日のような雲は無く初見の期待があったので、180mm望遠、Teegul-100、4cm双眼鏡を準備して行った。日没から30分以上双眼鏡で走査してみたが眼視での確認はできなかった。その間に望遠数秒露出でも撮影しておいた。ノイズの様にも見えるが、複数枚に移動しながら連続して写っている様なので一応パンスターズ彗星と考えた。
■2013-03-10

日没を過ぎた頃から4cm双眼鏡と10cm双眼鏡でパンスターズ彗星を探し始める。18時を過ぎて雲は少なくなり空の暗さも増して来る。今日は見つけられそうだとみゃおさんと話す。が、18時が15分過ぎ20分過ぎても眼視では見つけられない。その間もTOASTに載せたカメラはリモコンでシャッターを押し続ける。

18時25分を過ぎて追跡を断念。とうとう眼視では見つけられなかった。参加のみなさんに双眼鏡で見ていただけなかったのは残念だが、写真にはちゃんと写っていた。これはほぼ最後の頃で高度2度辺りだ。TOASTに載せてISO100f2.8の露出2秒、左上(東)へ向かってうっすらと尾も写っている様に見える。彗星部分を白黒反転させたが思った程はっきりしなかった(右)。
■2013-03-11
日中の気温もさして上がらず快晴が夕刻まで維持されて絶好のパンスターズ彗星日和となった。17時30分頃からいつもの観測場所で準備開始。隣町から撮影に来られたご夫妻、そしてご常連の巨木会会長ご夫妻が来られる。17時50分頃から昨日同様に4cmおよび10cmの双眼鏡とTOAST+180mm望遠で探し始める。昨日の写真から彗星とランドマークとの位置関係が分かっているので今日の導入は容易いと侮っていたのだが、またもや双眼鏡では見えて来ない。吉田誠一さんのページによると現在1.6等とのことだが、光度以上に手こずるなぁ。

漸く18時17分に撮影画像から位置を特定でき、10cm双眼鏡への導入に成功。強い中央集光と左上へなびく尾の様子も眼視で分かる。

写真から尾の長さはおよそ0.3度かそれ以上と推計。[写真はISO100F2.8露出5秒、右は彗星部分の拡大]
■2013-03-12

18時05分、高度10度を切った直後に早々と撮影と10cm双眼鏡への導入ができた。それからしばらくすると、ちびっこたちの声が聞こえる。職場の友だちが天文少年と天文少女を連れてやって来た。その頃、彗星は厚い雲に阻まれていたが、みゃおさんがしばらくの間子どもたちのお相手をしてくれていた。

TOASTで追尾しながらときどき撮影をして彗星が雲を抜ける瞬間を待つこと15分、雲の隙間に輝く彗星が現れた。「それ、見ろ!」、、、「見えた!」「うわぁ~!見えた~!」「見えた!」歓声の中にパンスターズ彗星まつりは最高潮を迎えるのだった。その後、双眼鏡で見えなくなるまで観望と撮影を続けながら、天文少女はみゃおさんに懐いて遠くの光を双眼鏡で楽しみ、天文少年は持参したラプトル50で木星などを夢中で眺めていた。
私のパンスターズ彗星出張観望はこれが最後になる。強風の中での地元の方々との観望会、思いがけない出会い、ちびっこたちの参加、延べ20人が集まったパンスターズ彗星まつり、楽しい3日間だった。最後に、近日点通過後3日間のパンスターズ彗星を並べてみた。

■2013-03-14

「私のパンスターズ彗星出張観望はこれが最後」
と二日前に言ったその舌の根も乾かぬ間に今夕も霞ヶ浦の堤防へ繰り出した。三日月とパンスターズ彗星が縦に並ぶのを見たかったからだ。月はこんなにきれいに見えているのにその下の雲は動かない。雲と雲の隙間から見えることを期待してしばらく撮影と眼視での探索をしてみたが、結局雲は居座り続け18時半に撤収。
■2013-03-15

夕方の西空が晴れているとついつい霞ヶ浦へ足が向いてしまう。仕事帰りに「念のため」寄って来た。だが、昨日同様に綺麗な夕焼けは見えたが彗星は雲の向こうだった。
■2013-03-16

晴れているので霞ヶ浦の近くの田圃の脇でパンスターズ彗星見物。日毎に自宅から近い場所に陣を張る様になって来た。手抜きではなく、地べたからでも十分見られるから。

尾の長さは30分程度だろうか。イオンテイルが写り始めたと言う情報もあるが、それらしき物は写っていないようだ。しかし、上方向へ伸びる尾の他に左側へ発散する尾もある様に感じられる。
■2013-03-17
3月16日に撮影したパンスターズ彗星画像についてS.Uさんからご指摘いただいたアンチテイルの件だが、同じ夕刻に撮った他の画像についても調べてみた。
なにしろかすかなものなので画像処理をしてもあまりはっきりと浮き上がっては来ない。その中から4枚を選んで並べてみたが、どうだろうか。複数フレームで同一方向へなにやらトゲのような物が出ている様に見えないでも無いので、単なるノイズでは無さそうだ。しかし、レンズ特性による光条も考えられるし、何と言っても他の観測者からアンチテイルの話題が全く聞こえて来ないのだから、アーティファクトの可能性が高いだろう。次の撮影の機会を待ちたいと思う。
■2013-03-21

帰宅した時点で西の方角にも晴れ間があったので18時半頃第2観測所へ行ってみた。今夕は西から20度北へそこから10度上にパンスターズ彗星はいるはず。何枚か探索撮影をする内に写り始めたので、それを使って10cm双眼鏡にも導入する。コマの明るさは3月12日頃に比べて明らかに暗くなっていて3等台に感じられる。近日点通過の頃に比べて尾の向きが随分北向きに変わって来た。

アンチテイルについてはその後も世間の話題に上がって来ないのでアーティファクトだったのだろう。今日の写真からはそれらしいスパイクは見られない。
■2013-04-04

パンスターズ彗星は3月末には明け方へ回っていたが、低空過ぎて屋根の陰だった上に天気も悪かったので、今朝が最初の撮影チャンスになった。EdgeHD800直焦点(レデューサーでf=1280mm)2分露出。
■2013-04-08

東の空で撮る2回目のパンスターズ彗星。4日前と比べてさらに早い時刻に撮影できたので星といっしょに写るようになって来た。撮影条件は前回同様に、EdgeHD800直焦点(レデューサーでf=1280mm)2分露出。カメラのファインダーでも彗星の位置が分かるくらいに明るいのには驚いた。これならば5cm双眼鏡で見られるぞと思ったが、、、ただいま双眼鏡はバランス係のお仕事中。使えねぇ~!

EdgeHD800の直焦点にあるD60と同架したD40が近いのでリモコンのちょっとした向きによってシャッターが同時に作動してしまう事もある(しないこともある)。それぞれのカメラの電源を入れ替えれば良い事なのだが、時間が無いので同時に撮りたいと言う貧乏人根性がこういうときにも出てしまうもんだ。1枚目、うわ~ピントを合わせていなかった(でも彗星は写っていた)。2枚目、うわ~M31が入っていなかった(後で写っている事が分かる)。M31の方向へカメラを少し動かして3枚目、うわ~彗星すら写っていなかった。二兎追うもの一兎も得ずになりそうなのでツーショットは諦めて、その後は再び直焦撮影に専念しようと思った頃には薄明が始まっていた、やれやれ。撮影を終えてから5cm双眼鏡で眺めてみたらすぐに確認できた。
■2013-04-09

昨日までの風がようやく止んだと思えば、見事に霞んで透明度はがた落ち。前日とほとんど同じ時刻なので違いが分かりやすい。
■2013-04-13

ガイドが安定しないので今朝はISO1600、1分露出にした(いつもはISO800、2分)。後で極軸を確認したらけっこうずれていた。自宅の屋根で隠れているとはいえ、工場のLED看板の光の方向に彗星がいるのは不利だな。撮影を終えて布団へ潜りTwitterを読んでいるときに、淡路島地震のニュースを知った。
■2013-04-22

4月17日頃に周極星となって、ただいまカシオペア座β近くにいる。光度は6.6等辺りらしいが、高度が上がったためか光度はさほど下がっていないように感じた。
■2013-05-07

ダストテイルはますます広がり180度へ近づこうとしている。
■2013-05-14

レモン彗星が隣家に隠れた2時過ぎ、南側からみるみる晴れ上がって来た。2時5分には快晴。パンスターズ彗星を撮影。でも、うす雲が覆っていた様で写真はボンヤリ。
■2013-05-16

■2013-05-24

空全体を雲が覆ってしまった。岩本彗星が上がって来るまでしばらく時間があるので雲写真を覚悟して写してみた。肉眼で北極星も見えないが、20cmのおかげでなんとか写ってくれた。
■2013-05-25

左上方向へ細い尾が画面からはみ出す程長く伸びている。右は彗星部分の拡大。

■2013-06-01

かなり長い尾が出ているが月明かりや光害のおかげであまり写らない。
■2013-06-04

しょぼい写りのパンスターズ彗星。
■2013-06-08

こぐま座の小柄杓に添って移動中。
■2013-07-12

梅雨明け後の水蒸気濛々の空ではこんなものか。
■2013-10-13

今春の話題をさらったパンスターズ彗星もいまや過去形で語られる存在になってしまった。夕方、西北西の低空、かんむり座の冠の中に居るが14等以下に暗くなって撮影は難しい。この写真もノイズ様で怪しげだが複数枚で同じ様に写っているので彗星と思われる。さて、近日点通過が近づいて来たアイソン彗星(C/2012 S1)と交替するため、パンスターズ彗星(C/2011 L4)の撮影はこれをもって終了しようと思う。