
『<増補>放射線被曝の歴史』
中川保雄著 明石書店 2011年 2300円
著者は1991年に48歳の若さで亡くなっている。本書の主要部分は1989年に病で倒れるまでにすでに書かれていたらしいが、推敲や追加部分はテープ吹き込みで、あとがきはそれすらも叶わない状況だったため奥様が書かれたようだ。
「1章 放射線被害の歴史から未来への教訓をー序にかえて」は放射線被曝を生み出し続ける世界のあり方に対する著者の怒りが凝集しており、それは本書全体を貫くパッションとなっている。また、「増補 フクシマと放射線被曝」は著者亡き後に起こった福島事故を受けて科学技術問題研究会の稲岡宏蔵氏が寄稿していて、福島事故と被曝についての分かり易い解説になっている。このふたつの章に目を通すだけでも本書から得られるものは大きいと思う。