
『原発推進者の無念』 北村俊郎著 平凡社新書 780円 2011年
原子力推進の立場で仕事をして来た著者は、退職後はインフラ整備の整った原発城下町富岡町(福島第1原発と第2原発の中間に位置する)に家を構え、そこで3.11に遭遇、避難者となった。2部構成の内の、第1部は避難生活についての避難者自らによる詳細なレポート、第2部は原子力の様々な問題点とその関係者が今後やるべきことについて述べている。
本書がこの時期に出た大きな意義は第1部の避難生活のレポートにあると思う。それも3.11直後に起こった事の報告としてだけでなく、今後を考える上での参考になるという意味で。なぜならば、福島第1の事故は終息しておらず、避難を余儀なくされる事態を今後も想定しておくべきだと思うからだ。そのときに、避難生活とはどのようなものか、避難者は何に苦痛を感じるか、問題点は何か、どのように解決した例があるか、個人はあるいは行政はどのような準備をしておくべきかなどなど、著者が経験した一例とは言え本書は数多くの示唆を与えてくれると思う。これが明日の自分の姿だと思うのは辛いが、まだ若干の猶予のあるうちに考えておくのが賢明に思う。