33年の時間を巻き戻し天文少年ならぬ天文壮年へ再入門。隊員1名、200mm、65mmの望遠鏡と双眼鏡で星空を楽しんでいます!
ゴフマン『新装版 人間と放射線』
2012-02-12 Sun 00:00
120102.jpg 『新装版 人間と放射線』 ジョン・W・ゴフマン著
    今中哲二他訳 明石書店 4700円 2011年

この書は1991年に社会思想社から2万円で発行されたものだが、今回の福島第1原発大事故を期に、明石書店が新装版として価格も4700円として復刻した。91年当時は売れそうもない本なので2万円も致し方が無かっただろうし、不幸にして本書を多くの人が必要とする事態が生じてしまった今この時の4700円はたいへん妥当な価格だと感じる。

「科学は誰にも理解できるし、科学者は自分の専門を誰にもわかるように説明せねばならない」という姿勢を貫く著者ゴフマンのこの書を読み終われば、ゴフマンの見解としてではなく、読者自身の判断によって放射線被曝の危険度を見積もることができるようになっているはずだと、今中さんのあとがきに書かれている。本書は膨大なデータから放射線と発癌・遺伝的影響について詳細な検討が尽くされていて、これらを理解すれば確かに今中さんの言われるようになれるような気がする。ただ一つ残念なのは、発癌・遺伝的影響以外は扱われていないので、それについては本書に匹敵する優れた書物を改めて他に求めなくてはならないことだ。

700頁を越える大著を読むのはたいへんなのだが、この放射性物質に満ち満ちた世界を生きる指針を一人一人が持つために、一度は目を通しておきたい本だと思う。個人個人で購入しないまでも、全ての図書館に常備してもらいたい1冊だ。
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この記事のコメント
ちょいと親父ギャグでも。。。
「あんたがたご不満?ヤクルトタフマン」・・・。
ブログを汚してすみません(^^)
全ての知識が本1冊で収まるとは虫が良すぎるので書きました。
オールマイティか特化したものか、いずれを選ぶのも本人次第です。
2012-02-14 Tue 23:19 | URL | 中井 健二 #7w5mtEUg[ 内容変更]
>全ての知識が本1冊で収まるとは虫が良すぎる

これ1冊に放射線についてのすべての知識が詰まっている本、という印象を与えたとしたら私の説明不足です。放射線が人間に与える影響の内、発癌・遺伝的影響について特に詳しく書かれていて、十分読み熟せれば、被曝のリスクについてゴフマンさんが言ったとか、小出さんが言ったとか、山下が言ったとかではなく、自分自身で計算し判断できるようになりますよ、とそういう意味です。

放射線問題は科学的にも社会的にも政治的にも複雑なので、オールマイティな虎の巻はあり得ませんね。
2012-02-14 Tue 23:50 | URL | かすてん #MLEHLkZk[ 内容変更]
>発癌・遺伝的影響以外
 こちらの本が出たら買いたいと思いますが、信頼できるデータを集めるのが難しいのでしょうね。

 発癌・遺伝的影響以外については、閾値があって、閾値以下では自分で細胞の修復を行えるので影響はまったく出ない、と一般には説明されています。そして、その閾値は、人によって多少違いますが250~500ミリシーベルトくらいに設定されているようです(500ミリシーベルト以下でも一時的な健康被害が出ることはあります)。それ以下の放射線レベルで影響が出ると、それは精神的な原因に因るのだとするそうです。

 でも、このロジックは正しいのでしょうか。免疫の弱い人やアレルギー体質の人、ちょっと天気の変化で身体じゅうのあちこちに不調を訴える人が多いので、そんな単純に言い切れることはないと思います。ぜんそくの発作など、精神的なものや個人的な体調もありますが、半分以上は環境の変化によるものだと思うのですがねぇ。
2012-02-15 Wed 08:12 | URL | S.U #MQFp2i1U[ 内容変更]
>こちらの本が出たら買いたいと思いますが、信頼できるデータを集めるのが難しいのでしょうね。

ゴフマンさんも「重大障害」と認めながらも「解析にもう1冊の本が必要であること」「ガンや遺伝的影響ほどには定量的な証拠がないこと」を除外の理由に揚げています。そして、もう1冊の本を書かれる前に亡くなられたのは残念です。

>閾値以下では自分で細胞の修復を行えるので影響はまったく出ない、と一般には説明されています

十分な証拠が無いにしても、この辺りの議論は安全側でやってもらいたいものですね。
2012-02-15 Wed 22:50 | URL | かすてん #MLEHLkZk[ 内容変更]
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