今回の福島第1原発の件に限らず、原発事故関係の報道で度々耳にする「ただちに健康に被害が出るレベルではない」 って、どう言う意味?結局のところ人体にとって安全なの?危険なの?この一番知りたいところが良く分からない。
ライフラインについて普段から注意を傾けておかなくてはならないのだろうが、平穏に暮らしている時にはほとんどの人にとって興味は無いし、傾ける耳も持たなかったと思う。緊急事態に至ってようやく原発の危険を感じ始めたということだろう。不幸な事態ではあるが、こんな時でもなければ原発や放射線について考える機会は無かったのではないだろうか。
それについて、私見ですがという断り書き付きですが、放射線に関わるお仕事をされているS.Uさんからコメントがあった。放射性物質がコントロール下にある場合の安全はこのような考え方で守るという基本的な考え方。
しかし、今回の事故では外部被ばくに加え、広範囲にまき散らされる放射性物質による内部被ばくが厳しい問題になってくる。それについては改めて取り上げたいと思っている。
かなり長くなってしまったが、2回分のコメントをご本人の許可をいただき以下に転載させていただいた。
今夜の観測:U Mon6.7等、ST UMa6.8等。節電協力のおかげで大規模停電を免れたとの報道。恨めしいのは、暗い夜空の恩恵に預かれる機会を奪う月齢12.6の月。
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以下、私見ですが、これは、おおざっぱに言えば、退避区域外では、
・一時的な被曝であれば健康被害はまったく出ない
・一定期間(たとえば1週間以上)連続して被曝すると、確率的影響(癌を発症する確率が0.1パーセントレベル上がる)が出る可能性がある
ということだと解釈しています。ですから、心配はしなくてよいが、無駄な被曝はしないよう出来る範囲で注意するのがよい、という専門家の指摘の報道は適切だと思います。核燃料施設に水が注入されて、放出が近いうちにおさまれば、一般の健康被害は問題にならないでしょう。
私が感じる問題は、放射線安全や管理の考え方をちゃんと伝えていないことです。施設境界付近での放射線管理レベルは、集団線量や確率的影響を原理において設計されていると理解しています。つまり、(病気になる確率×人数)を小さくすると言うことです。たとえば、癌発症確率が0.1%上がり、そこに100万人住んでいれば、癌になる人が1000人増加するという考え方です。この考え方が本当に正しいかどうかはわかりませんが、放射線安全の基本的な考え方であることは動かせない事実です。
放射線管理がこのような考え方に基づいて設定されていることはまったく説明せずに、「ただちに健康に影響ない」だけですませるのは、安全管理の原則の理解をゆるがせにする不適切なものだと思います。まあ、これは、今回始まったものではなく、電力会社が常々、「自然被曝より小さいので問題ない」とかという説明に終始していることと同根ではありますが、テレビに出るような専門家はちゃんと説明すべきです。
[2011.03.16]
★・ 放射線は、目に見えなくて、身体にも感じなくて、病気になるから怖い。 という議論があります。これは、半分は正しいですが、半分は間違っています。放射線は、目に見えないですが、装置さえあれば比較的簡単に測定可能です。専門家が少ないだけです。基本的には、電波や紫外線と同じです。物理現象ですから、化学物質や病原体の検出よりも単純です。
また、自覚症状がないのに病気になって怖いのは、多くの成人病でそうですから、放射線だけ取り立ててそうということはありません。むやみに恐れることはありません。
・ それにも関わらず、放射線を発生する施設の安全が非常に重要なのは、いったん漏れると大勢の人の被曝を食い止めることが困難になるからです。食い止められないとなぜ困るかというのは、前回のコメントに書いた通りですが、集団線量と確率的影響の考えに基づいています。人間一人の積算での被曝量が確率的影響には決定的に重要です。
被曝量の単位は、マイクロシーベルトで、それは、マイクロシーベルト毎時×時間で 計算されねばなりません。
以上の2点が、最重要であると思います。
[2011.03.17]