2007年、33年の時間を巻き戻し天文少年ならぬ天文壮年へ再入門。隊員1名。その後の変化でただいま星空は休眠状態。郷土史、草刈り、読書、ドローンの記事が多くなっています。
青木更吉先生 90歳の調査報告書
2023-10-15 Sun 00:00
2310061.jpg『利根川の放水路を歩く』 青木更吉・當麻多才治著
            たけしま出版 2023年 2400円

先日、辻野弥生さんの『福田村事件 関東大震災・知られざる悲劇』を読んだ際、その調査活動にとって流山市立博物館友の会、流山市歴史文化研究会が大きな役割を果たしていると書かれていたので、本を読んだ感想を青木更吉先生へ書いて送った。さっそくいただいたお返事には、「辻野弥生さんは研究会の仲間なので小生の取材した人で関東大震災関連にくわしい人を紹介もしています。(中略)なお小生の『利根川の放水路を歩く』が出ましたのですぐ送りますのでこれもお読みになってください」とあり、間もなく別便で本書をご恵贈いただいた。

青木先生の利根川東遷の調査については昨年出版された『利根川は東京湾へ戻りたがる』(→利根川東遷の歴史を砂丘と共に辿る)に詳しく書かれていたが、この新著はさらにその先の調査報告と提言が提示されている。そして、初めての共著。健脚、速筆の青木先生をして「いい本が出せそうという意欲が湧いて」くるパートナーと出会えたということのようだ。

2310063.jpeg序章に「放水路とは何か」が書かれている。本題の利根川の話題からは逸れるが、自分の記憶の放水路について驚きの事実を知る機会になったのでメモしておく。自分は北区中十条3丁目交差点近くで生まれて3歳までそこで育ったが、親と荒川放水路まで遊びに行った記憶がある。電子国土Webで測ると、隅田川まで約1km、荒川まで約2kmの距離がある。ここで隅田川、荒川と書いたが、当時はまだその名称はなく、それぞれ隅田川は荒川、荒川は荒川放水路と呼ばれていたことを今知った。記憶に隅田川なんてないはずだ。Wikiによると「「荒川放水路」は1965年(昭和40年)に正式に荒川の本流とされ、それに伴い岩淵水門より分かれる旧荒川全体が「隅田川」となった。それまでは現在の千住大橋付近までが荒川、それより下流域が隅田川と区別されていた。」とある。そうそうあの頃の2本の川の記憶が荒川と荒川放水路だったのは間違いではなかったのだ。[右写真は旧岩渕水門(2012年9月)]
[追記]NO HATE TV:Vol.186 - 荒川放水路の歴史

さて感想なのだが、全体の執筆・編集方針として、それぞれが書いた原稿をもう一人が補足するという執筆方法にしたとまえがきにあるが、これまで青木先生の単著に親しんできた自分には読み易くはなかった。それはおそらく、本書が、詳細な調査の内容を詳細に報告することを目的としているためと、江戸川、利根川上流流域の地形や地名に馴染みがない自分には、特に一章 江戸川の放水路と二章 利根川上流の放水路は読み進むのに骨が折れたことなどが理由だと思っている。三章 利根川中下流の放水路、四章 印旛沼掘削工事になってようやく馴染みのある地域が近づいてきて、読後頭に残る部分が若干増えてきた。はっきり言って、楽に読める本ではないと思う。本書を読むには、読者は詳細な地図を参照できるようにした上で、知らない地名が出てきたらすぐに地図に落としながら読んで行かざるを得ない。これには相当な手間を感じるだろうが、それでも読み進むことのできた読者は図らずも著者らの労力の一端を追体験することになる、これはそんな本だと思う。本書は、90歳の歩みに着いて来れるかい?という万年青年・青木更吉先生からの挑戦状だったのだと、ただいま気づいたところだ。

この様に大変な労作なのだが、残念に感じた点がいくつかあった。(1)図、特に地図が小さいため地形や文字が読み取れず本文を補う役目を果たせていない、(2)図や表の多くが低解像度デジタル画像を使っているためルーペで拡大しても細かい部分が読み取れない、(3)二代将軍秀忠が計画した小金掘割構想の場所と庄内藩人夫によって行われた印旛沼掘削工事の部分などを現在の地図で示して欲しい、、、など。(3)は本文を読んで自分で復元しなさいと言われてしまいそうだが。

そして、本書出版の目的となるのが終章 利根川東遷完成への提言だ。利根川-霞ヶ浦-北浦-鹿島灘をトンネルで連絡して、利根川の放水路にするという提案だが、川を分流して放水路とする場合と違い、異なる水界を繋ぐことで生態系へ影響は出ないのだろうか。大きな反対に晒されている霞ヶ浦導水事業を拡張する内容なので、影響の及ぶ範囲は広大になる。人間社会を水害から守ることを優先するならば、生態系への影響は次段階の優先度になるのだろうか。自分にはそれを判断できる知識がない。
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