2022-09-14 Wed 00:00
![]() 八条院暲子に関わる小説は、谷口弘子氏の著作に続き2本目。今回の作品は王朝物語ではなく、高野山にある八大童子の制咜迦童子像は、八条院暲子が猶子である以仁王に似せて運慶に作らせ、また、運慶は若き日の八条院と雅仁(後白河)を思い描いて矜羯羅童子を制作したというモチーフで描かれている。保元・平治の乱から治承・寿永時期の朝廷内部の権力争いが、八条院の目を通して運慶へ語られる部分が主要なストーリーを構成する。八条院は細かなところに頓着しない気取らない性格だったということは永井晋『八条院の世界』にも書かれていたが、第二章の制咜迦童子像の前で運慶と酒を飲む場面でのその飲みっぷりの庶民的なところはそんな性格を描いているように見えるし、物語上、運慶も八条院に喋らせる魂胆があったのだろうが、61歳の皇女にそんなに飲ますんじゃねぇよとちょっと笑ってしまう場面になっていた。そして、酔いが回る中で母美福門院得子と待賢門院璋子との確執や崇徳院と後白河の生き方について、王族の中の人である八条院でなければ知り得なかったことまで語り尽くすに至るわけである。文章は読みやすく、細かく研究書などにも取材しているので楽しめる小説だと感じた。 |
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