2018-05-02 Wed 00:00
![]() 『日経サイエンス 2018年6月号』 日経サイエンス社 1440円 →日経サイエンス 2018年6月号 またまた物理ネタ。4月26日にニコ生中継されたSuperKEKB初衝突完全実況中継のまとめ回の最後で、Belle II実験プロマネの後田先生が、宣伝していいのかなぁと言いながら控えめに宣伝されているのを見ながら購入。「ビューティー粒子の崩壊を追え」はCERNのLHC加速器を使ったLHCb実験について、「スーパーKEKB始動」はKEKのSuperKEKB加速器を使ったBell II実験についての記事で、これら2本で「ポスト標準モデルへの手がかり」という特集になっている。SuperKEKB初衝突達成に合わせて組まれたタイムリーな特集といえる。 LHCb実験もビューティー(=ボトム)クォークを含むB中間子の崩壊過程を調べる実験という点で、Belle II実験ともろに競合する。実験の競合について言うならば、かつて、KEKB加速器を使ったBelle実験は、米スタンフォード線形加速器センターのPEP-II加速器を使ったBaBar実験を追いかけ追いつき追い越す過程で、初期設計を大きく超える驚異的な性能へと達した。今から始まるBelle II実験は、2011年から始まってすでにデータを集めているLHCb実験を追いかけることになる。二つの実験で大きく違うのは、SuperKEKBが電子-陽電子衝突、LHCbが陽子-陽子衝突である点。年季の入った加速器ファンだとこの組み合わせを見て、歴史上有名なJ/Ψ粒子発見にまつわる「十一月革命」を想起するかもしれない。新粒子発見先陣争いをめぐって当時あった様なバトルが繰り返されるのか、それともそれぞれの加速器の長所短所が明瞭になっている現在、異なるタイプの加速器で確認が取れてこそ信頼性が向上するということで協力関係になるのか。この先10年ほど続く実験になりそうだが、興味は尽きない。 共に短い解説だが、LHC+LHCb、SuperKEKB+Belle IIの実験方法、目指すもの、またそれぞれの長所短所などについても説明されているので、この先の数年を楽しむためのガイドになる特集と言える。 |
| 霞ヶ浦天体観測隊 |
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