2007年、33年の時間を巻き戻し天文少年ならぬ天文壮年へ再入門。隊員1名。その後の変化でただいま星空は休眠状態。郷土史、草刈り、読書、ドローンの記事が多くなっています。
金本正之先生との出会い(その2) 資料みたいなもの数点
2016-10-10 Mon 00:00
金本正之先生との出会い(その1) 接点年表 の続きを書いておこう。

(1)1960年
1609252.jpgこの2枚の写真は、1960年6月15日の安保反対デモの最中に国会内で警官隊による暴行で死亡した樺美智子さんの遺稿集『人しれず微笑まん』の口絵写真のもの。

『人しれず微笑まん』 樺光子編 三一書房 1960年 250円

1609251.jpg当時樺さんが学生として所属していた東大文学部国史学研究室に、金本正之先生は大学院生として所属していた。安保反対声明文の中に、お二人の署名を見つけることができる(上の写真)。1609271.pngまた、合同慰霊祭での集合写真では遺影のすぐ隣に写っているのが金本先生(左の写真)。私が出会う15年前である。出典不明だが合同慰霊祭の写真がもう一枚あった(右写真)。

(2)1975年
1609255.jpg金本正之「『茨城県史料=中世編』I・IIの存在を楽しむ -一利用者のひとり言- 」(『茨城県史研究 33』(1975年))

私がS予備学校で金本先生に出会った時、先生は茨城大学の教官をされていた。講義の中でその時代に関連する展示会が水戸の茨城県立歴史館で開かれていますよというお話を伺いさっそく見に行った。県立歴史館を訪れたそれが最初になる。その報告と感想をお話しするのをきっかけに講師控え室を訪ねて初めて先生と直にお話ししたのを覚えている。
1609253.jpg右の写真は歴史館が発行する『茨城県史料 中世編 I』とそれに関する金本先生の寄稿文が掲載されている『茨城県史研究 33』だ。左にその出だしの部分をコピーしておく。ここに出てくる『臼田文書』は県南中世史を解明するための最重要文書群の一つで、『茨城県史料 中世編 I』はいまの私にはなくてはならない史料集となっている。私が先生とお会いしていたちょうどその時期に書かれた寄稿文と史料集を、それから30年後に机の上で開くことになるとは、実に不思議な巡り合わせを感じる。そして、先生がお元気であったらお聞きしたいことが山のようにあったのだが。

(3)1975年
1609211.jpg先にご紹介した通り古いカセット箱の中には、予備校での金本先生の最終講義の録音も残っていた。

金本先生の講義は予備校が作っているテキストなどまったく使わず、とにかくその時代を理解するための重要事象について、大きな歴史の流れを縦糸に、有名な物語を横糸にして時代そのものを織り上げて見せてくれる、そういう進め方だった。一番印象に残っているのが『曽我兄弟の敵討ち』を題材にして、鎌倉幕府の成立と中世武士社会の様相を提示してくれた講義だ。大阪市大の入試にまさにその時代が出て、その問題についてはおそらく一番面白い解答を書いた一人だっただろうと自負している。その時に必ず登場していたはずの八田知家(現在の茨城県南を治めた小田氏の祖)については記憶に残っていないのが残念だ。
このような進め方の講義のため当然入試時期が近づいてきても、近・現代まで到達しない。そこでまる一日使って近現代史の長時間補講を行うことが恒例となっていた。この日だけは教務も検札を行わず、多くの学生が詰めかけ廊下まで立ち見で溢れかえり大教室は大変な熱気に包まれた。カセットテープに残っていたのは数時間に及んだ補講の中で披露されたたくさんの歌だった。曲名は以下。
 インターナショナルの歌
 船頭小唄
 籠の鳥
 東京行進曲
 昔恋しい早稲田の自由(東京行進曲の替え歌)→音声
 酒は涙か溜息か
 爆弾三勇士の歌(与謝野鉄幹/辻順治・大沼哲)
 肉弾三勇士の歌(中野力/山田耕筰)
 天国に結ぶ恋
 青年日本の歌
 駿台生希望の歌(嗚呼玉杯に花うけての替え歌)
 駿台第2校歌(=嗚呼玉杯に花受けて)
現代のように撮影、録音、録画が簡単にできる時代ではなかったので残念ながら音は聞きづらいが、これはこれで貴重な記録だろうと思っている。

(4)1988年
1609254.jpg武蔵野市成人学校『日本中世史入門』配布資料

1988年9月〜11月、武蔵野市成人学校『日本中世史入門』10回シリーズは、自宅からも近い武蔵境駅近くの市民会館を会場に開講された。市民向け講座の講師として招かれた金本先生に13年ぶりに再会できたわけだが、地域のおじさんおばさんの前で講義する先生からはS予備学校のカリスマ講師の熱気は感じられなかった。逆に言うとそれは若人へ向けて放っていた金本先生のオーラがいかに凄まじかったかの証でもあったと思う。
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