
息子さんからの電話を受け取って「しまった」と思った。これまでの17年間にいくらでもご挨拶にいく時間はあったのに、、、。ときどき電話でお話しする声は八十代半ばの方とはとても思えない張りがあったため、うっかり油断していた。今の仕事の最初に出会った師匠だった。師匠の元にいたのはわずか10ヶ月だったが、その後経験を積んで行くのに必要な基礎的なことを惜しみなく教えてくれた。そして、「この免許を持っている人には社会的な責任と地位というものがありますから、それに相応しい処遇をします」と言われて、学校出たばかりで何もできない見習いの自分にそれなりの給料を出してくれた。いつも新しい事を探して勉強されていて、それを物腰柔らかに楽しそうに私たちに語られていた。
謹んでご冥福をお祈りするとともに、至らぬ弟子をどうかお許しください。
先達の遠き旅立ち 寒椿
先立ちて西を目指すや 寒昴