33年の時間を巻き戻し天文少年ならぬ天文壮年へ再入門。隊員1名、200mm、65mmの望遠鏡と双眼鏡で星空を楽しんでいます!
『星のふるさと』 -火星の後-
2009-02-28 Sat 00:48
9月30日以来ちょっと間が開いたが、『星のふるさと』-衝撃のデビュー-の続きへ進もう。

0810043.jpg◎観測:『月刊天文ガイド』1972年6月号に火星スケッチが紹介された後の鈴木壽壽子さんはというと、その年の暮れ11月より流星塵の観測報告を始められ、その後1978年12月まで継続された(写真は『続 日本アマチュア天文史』の一部だが、名前に誤植がある)。その間1973年の火星接近の際にも71年と同じ6cm屈折望遠鏡でスケッチをされ、そのうちの1枚が『星のふるさと』に載っている。
◎執筆:1974年から75年にかけて東亜天文学会会報『天界』に数回に渉り[星のふるさと]と題して随想を寄稿されている。これは想像だが、おそらく佐伯恒夫先生からの要請があったのではないだろうか。書籍としての『星のふるさと』は1975年12月に誠文堂新光社から出版されたが、『天界』に掲載されたものは未収録である。
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流星塵 1枚のスライドグラスから
2009-02-27 Fri 00:05
『流星塵とその測定法』の中で森久保茂先生は600倍の場合2cmx2cm範囲をスキャンするように指導されているが、今回は初めてなので1枚全体を見る事にした。とは言っても顕微鏡のメカニカルステージの動作に限界があるため4.5cmx2.6cmの範囲を見た。

スライドグラスの上には塵芥、花粉、その他わけの分からない怪しげな物体が普通に見られる。ところがしばらく顕微鏡を覗くうちに、それらとはまったく別物と感じられる、球形、光沢、硬質感などの特長を持った一群の物体があることに気づいた。これが流星塵なのではないだろうか。それらは特徴的なので5μ以上の物であればまず見落とさないと思われる。

(1)13μ:横から光を当て集光点を確認 (2)12μ:塵埃とは明らかに異なる形状 (3)14μ (4)5μ (5)5μ:ガラス様粒子 (6)一目盛り10μのスケール

(1)0902252.jpg(2)0902253.jpg(3)0902254.jpg

(4)0902255.jpg(5)0902256.jpg(6)090225.jpg

24時間露出のスライドグラス4.5cmx2.6cmの範囲を観察した結果:
5μ以下:今回は無視
5μ~10μ:10個確認
10μ以上:5個確認
「表面の滑らかさと美しさが全く違う」と鈴木壽壽子さんが言われたのはこれの事だったのかとうれしい共通体験。現在宇宙空間のどこかを飛行している名も知らぬ彗星由来の物質[といわれる]流星塵をいままさに自分の手許で見ているとは、なんとも不思議な事ではないか。それにしても、わずかこれだけのスキャンに10日も掛かったよ。
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流星塵を初めて見る
2009-02-26 Thu 00:14
2月24日に書いた「流星塵の探し方」の方法で採集して、顕微鏡で観察してみた。

0902152.jpg 流星塵はガラス板法で数日かけて6枚採集した(2枚ずつ同じ露出)。冬場のため朝見ると霜が降りている。温度が上がると霜が解けて水が乗った状態になるが、試料の引き上げ時にその水を落とさない事が肝要。

0902142.jpg 顕微鏡は貰い物。もう何十年も手入れされずに放ったらかしだったようでガラス面というガラス面が汚れまくり。取りあえず見られれば良しという事で、接眼18x対物40の720倍でスキャンを開始。ただし、森久保先生は600倍を勧めている。

090214.jpg あまり小さな粒子では見映えがしなさそうなのでまずは10μ台のものを探す事にした。と、いきなり黒くて丸い10μくらいの粒が視野に現れた。焦点を内外に調整しても黒い粒。横から懐中電灯で光りを当てると時々ピカッと光る。ということは円盤でなく立体。これらは流星塵の特徴に合致。鈴木壽壽子さんもこういうものを見ていたのかと追体験できてよかった。デジカメ手持ちコリメートで最初の記念写真。
 頂いたコメントから「やってみようかと思ったことがある」とか「流星塵を観察したことがある」という方々がいらっしゃることが分かった。流星塵は由緒正しい天文少年育ちの方々の心にちょっと響く対象なのかもしれない。ただ、こんな古典的な観測方法のままでよいのだろうか。

 明日は、この他の獲物をご紹介。
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ルーリン彗星(C/2007 N3 Lulin)アルバム
2009-02-25 Wed 00:23
ルーリン彗星は黄道沿いを走り抜けながら毎日立ち寄る先々で手当り次第にお相手を取っ替え引っ替えのなんともプレーボーイなヤツです(参考経路図)。2009年2月24日正午頃に地球最接近したルーリン彗星の画像を並べてみた。順番は右下が古く矢印の順に新しくなっている。

0903203.jpg0903202.jpg090326.jpg
ルーリン彗星(C/2007 N3 Lulin)アルバムの続きを読む
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流星塵の探し方
2009-02-24 Tue 00:25
ryuseijinかつて息子さんに地球の埃と流星塵の違いを尋ねられた鈴木壽壽子さんは「表面の滑らかさと美しさが全く違う」と答えられたそうだ。このお話を伺って自分でも流星塵をぜひ見てみたいと思った。先日職場を引退した方からオリンパスの双眼顕微鏡を譲っていただいたので、試しにガラス板法で流星塵を採集して鏡検してみることにした。
[上の写真は流星塵採取三点セット(スライドグラス、グリセリン、ワイパー)]

ryuseijin■観測方法(『流星塵とその測定法』による)
(1)スライドグラスにグリセリンを1滴
(2)ワイパーで一様に塗布(グリセリンが見えなくなるまで拭き取る)
(3)庭の観測台で1日露出[右写真]
(4)顕微鏡で観察
(5)スケッチ、撮影

0902232.jpg今夜の観測:夕方までかなりの雨が降ったので空は濛々の霞。それでも22時過ぎには晴れ間が出たので地球最接近前夜のルーリン彗星と土星のツーショット。透明度悪り~。変光星は申し訳程度にU Mon6.1等のみ。
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ルーリン彗星の尾
2009-02-23 Mon 00:14
昨夜のF山観測所でのルーリン彗星撮影会は残念ながら曇天解散になり帰宅。ところが寝る前に未練がましく見上げた空に星が出ている。

090222.jpg 急いで撮影準備。と、TOASTの極軸を合わせるか合わせないかで北極星が見えなくなる。南を振り向くとベタ曇り。今夜のルーリン彗星はηVirのすぐ近くにいるのだが、土星もスピカも見えないのではηVirが見つかろうはずも無い。0902222.jpgそれでも雲のまにまにわずかに顔を出す星々を頼りにηVirがありそうな方向へレンズを向けて待つ事暫し。雲が薄くなる度に「双眼鏡でηVirを探し、カメラをその報告へ向け、10秒露出」を繰り返し何回目かでようやくルーリン彗星が写野に入る。
 そうとう明るい。10秒ですでに尾も写っている。今夜はかなりの雲量だが、その雲を透してでさえ5cm双眼鏡で楽々見えている。光度は5等級前半に達しているのではないだろうか。

 白黒反転させてみると左へ伸びるダストテイルに加え、右へイオンテイルらしきものが数条出ているように見える。他の写真にも似たようなテイルが写っているのでまんざらノイズだけでもあるまい。
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現代の歴史的資料 若き研究者の気概
2009-02-22 Sun 00:23
0902102.jpg 歴史的資料?ということで高エネ研のページからリンクを辿って読めもしないのにこんなものをダウンロード。で、分かった事と言えば、、、益川の英名は母音uを入れないMaskawaだということくらい。

 この歴史的小林・益川論文を完全文系人間のヨメさんが横から覗いている。そして、特殊ユニタリ群の記号SU(n)はS.Uさんのハンドルだと勝手に納得している。後でご本人に聞いたらまんざら外れではなかったらしい。もう一点、最終ページの引用文献4本という少なさにも驚いている。これは画期的な先行研究だから引用できる過去の文献が少なかったというわけで、ここに若き研究者の気概を感る。

 昨日(21日)東京で行われたシンポジウム「小林・益川理論とその検証」はどんなだったろうか。次はこんなノーベル賞受賞記念講演会が予定されている(すでに募集は締め切られている)。いよいよ益川敏英氏登場だ。

今夜の観測:同好会のF山さんの観測所へ遊びに行く。着いてすぐ変光星を4つだけ見ておく。ミラ5.1等、W Ori7.0等、RX Lep6.3等、U Mon6.0等。ミラは減光に勢いがついたみたい。途中からO倉さんもやって来てルーリン彗星が上がって来るまでの時間、芋を食いお茶を飲みおしゃべりをしながら超新星探索で時間を過ごす。22時30分頃になったのでさてルーリン彗星を見ましょうと思ったら雲が全天を覆っていてほとんど見られず。今夜はこれにて解散。

帰宅後寝ようと思ったら星が見えていたので、、、続きは明晩。
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4連敗が一転 大盛況の観望会
2009-02-21 Sat 00:18
今夜は稲敷市立歴史民俗資料館星空観望会が市立桜川中学校天体観測ドームで開催されたのだが、朝起きたときには「観望会4連敗でした」と書く事になるはずだった、、、。

090220.jpg 金曜日の観望会4連敗は勘弁してよという願いが通じたのか、昨夜からの激しい雨も昼過ぎには上がり夕方近くには天気も回復、雲は無くなった。靄が立ち上りシーイングはひどいものだったが、開催できただけで十分だ。

0902202.jpg まずは最大光度の金星から。三日月をちょっと太らせた形が見どころなんだが、空気の流れが激しく陽炎のように揺らめいている。デジカメ手持ちコリメートではこんなにデブってしまった。
 次はオリオン座の大星雲M42。鳥が羽を広げたようなガスの形を見てもらう。その次におおいぬ座のM41に寄り道したら良かったのかもしれないが西に傾いたアンドロメダ座の銀河M31へ行く。靄が立つような空のため中心部がぼんやり見えるにとどまった。観望会終了時刻を若干過ぎたが最後に東に昇ってきた土星を見てもらえて参加のみなさんにも満足していただけたのではないだろうか。

 今夜の観望会はいつも以上に星に興味ありありの参加者が多かった。ある年配のご夫人はニュースで聞いたというルーリン彗星を見たがっていたが残念ながら観望会時間中には無理だった。あるお母さんの質問に答えて「星が死ぬときに爆発することがあるんですが、、、」というと下の方から「超新星、、、」と小さな女の子が目をくりくりさせて見上げていた。「この子、星が好きで宇宙飛行士に成りたがっているの」とお母さん。これだけで今夜来て良かったと思える出会いだったが、最後に事務局担当者から小学6年生のF君が天文愛好会へ入会との紹介があった。こんなに若い世代が加わってくれるとおじさんたちも新鮮な気持ちでまた星が見られそう。その他、遺跡関係の事で私を知っていたという方もいらしてそちらの話も弾む。そういう訳で、いつものごとくお手伝いの役には立たず己が楽しんだかすてんでした。

今夜の観測:観望会の最中にW Ori7.1等、RX Lep6.3等、R Lep7.8等のみ目測。ドームの向きの都合でミラは見られず。観望会の片付けが終わる頃には雲が出ていた。帰宅後はさらに雲が多くなり風も強くなりルーリン彗星は見られず。
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DVD『ハッブル宇宙望遠鏡が見た宇宙』他
2009-02-20 Fri 00:45
職場の青年がDVDと本を貸してくれた。

090219.jpg『ハッブル宇宙望遠鏡が見た宇宙』
 田村元秀監修 NHKエンタープライズ 2007年 3800円
『続 ハッブル望遠鏡が見た宇宙』
 野本陽代著 岩波新書 2000年 1000円

ハッブル宇宙望遠鏡は1990年に打ち上げられている。そのころは天文から離れていたので、一般的な科学ニュースとして記憶に残ったくらいだった。しかし、今になってみると、途中大々的な何回かのメンテナンスを経て19年、随分と寿命の長い人工衛星になったものだ。不具合とメンテナンスについては3章に書かれていて、ハッブルが写した美しい天体写真よりもむしろそちらの方がエキサイティングに感じられる。
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ミミネタリウム
2009-02-19 Thu 00:32
090217.jpg JAXA広報ページに耳で聞くプラネタリウム「ミミネタリウム」というPodcast配信コンテンツがある。さっそくiPodtouchへダウンロードして寝ながら聞く事にした。

今夜の観測:寒い一日、帰宅して家へ入る前に4目測。ミラ4.8等、RX Lep6.3等、U Mon6.1等、W Ori7.1等。
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ルーリン彗星の花道
2009-02-18 Wed 01:11
0902172.jpg夕方仕事の片付けをしていたら職場で仲良しの娘さんが「3日遅れで~す」と届けてくれた。これ、包み紙の印刷かと思ったら直接印刷されている。いつもながらあなたのお母さんの見立てはすばらしい。

090218.jpg今夜の観測:夕方は雲っていたが、23時頃には雲も取れてきた。ルーリン彗星も夜半前に見られる時期になっている。9日ぶりに見るルーリン彗星は見違えるほど大きく明るくなっていた。25x100双眼鏡なら両側へ伸びる尾が良く分かる。撮影の合間に西へ沈むU Mon6.1等を目測。
0902182.jpgこの先ルーリン彗星は黄道に沿って進む。2月24日、土星のすぐ脇で地球に最接近。さらに、その先の進路にも華やかな星々が待ち受けている。
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『月刊 星ナビ』創刊100号記念
2009-02-17 Tue 01:04
0902162.jpg どうも「○○記念号」とかいうのに弱くて、『月刊星ナビ 創刊100号記念』を買ってしまった。「キーワード100」という特集は用語集として使えそう。項目はこんなかんじ。最近星見を始めた知り合いの若者にも勧めておこう。
090216.jpg 中には「05再入門:元天文少年・少女が人生の繁忙期を終え、再び空へ目を向けるようになる人が多い。(中略)育った時代の感覚を大切にしつつ再入門する傾向が強いようにも思われる。」これって俺たちの世代?でも、まだ繁忙期は終えていないし可処分所得もたいして増えていないけど。
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オオヒシクイ 北帰か?
2009-02-16 Mon 00:49
0902153.jpg 春の訪れを予感させることがもうひとつ。この冬の間11月1月に2回見に行った江戸崎の稲波干拓地で越冬しているオオヒシクイ、北帰が近づいているのかここ数日の動きがあわだたしくなっているようだ。稲波干拓のオオヒシクイ江戸崎雁の郷友の会のページから拾ってみると、
2月12日 午後2群に分かれて全56羽飛び去る
  13日 26羽戻って来る
  14日 昼前に26羽飛び去る
今日は行っても見られないかもしれないが一応サイクリングがてら稲波へ行く。
  15日 最初に飛去した30羽の内の2羽が合流して戻ったらしく28羽
昨日の陽気にうかうかと飛び立ったもののまだ早すぎると思って戻ってきたのだろうか。まだあまり遠くへは行かず霞ヶ浦辺りで北帰の時期を窺っているのだろうか。
 今日は鈴木壽壽子さんについての原稿をWORDで書いていたのだが、ある特定行のみ行間隔を変更するのはどうしたら良いのか分からず立ち往生。どなたかアドバイスください。
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黄砂~春一番~初夏の気温
2009-02-15 Sun 00:45
090215.jpg三日続けて天気の話題。
 夜の間ずっと吹き荒れていた風も出勤前にはピタリと収まりやれやれ。6時の外気温が18℃。職場は半袖Tシャツ姿で暑い暑いの声。さらにこの後最高気温21℃の予報通り桜も咲こうかというぽかぽか陽気に。ただ、日中がこの暖かさで夜になって冷え込むと霞がもうもうとして今夜は星見どころではないかも。それにしても観望会が中止になった昨夜とえらい違いだ。数日前に黄砂の到来が話題になり春が近いと思っていると翌日には春一番で実感させられ、次の日には春を通り越して初夏を体験。明日は10℃近く下がる予報も。あぁ、めまぐるしい。

今夜の観測:ミラ4.8等、R Lep7.7等、RX Lep6.0等、U Mon6.2等、W Ori7.1等。
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春一番と観望会3連続延期
2009-02-14 Sat 00:34
夜になってから春一番の猛烈な風の吹き始めた。

090213.png 先週、1週間に3回の地元小学校観望会がどれもうまくいったという『星空寄り道散歩道』のほくとさんだったが、一方、我が地元近くの小学校で予定されている観望会は1月中に2回雨天・曇天中止で、替わりに延期になっていた今夜もまたまた曇天中止。関東の真冬に3回連続中止なんて相当確率低そうだが、雨男が紛れ込んでいるのだろうか。でも、延期延期になっている間に土星の出が早くなって観望会中にも見やすくなってくるぞ。次回の開催日には輪は細いが見頃の土星に期待だ。[写真は気象庁の24時間予想天気図より]
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黄砂の季節
2009-02-13 Fri 00:57
090212.png 立春が過ぎ、梅の便りがメールに添えられる季節になってきた。それとともにやって来るのが、花粉と黄砂。幸いこれまで花粉症からは自由なのだが、黄砂はどうしようもない。今年はどれほど来るのだろうか。せっかくの2月の透明度が台無しになりませんように。

 写真は気象庁の黄砂情報をピックアップしたものだが、その他の昨年見つけた黄砂情報もどうぞ。

今夜の観測:ミラ4.5等、RX Lep5.9等、W Ori7.1等、U Mon6.2等。
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森久保茂『流星塵とその測定法』
2009-02-12 Thu 00:06
0811032.jpg 森久保茂『流星塵とその測定法』 銀河書房 1986年 1500円

 流星塵観測の第一人者であった故森久保茂先生がまとめられたもので、流星塵観測についての教科書・手引書的内容といえる。ただ、出版された頃には日本の大気は流星塵観測に適さない状態になってきてしまったというのはなんとも皮肉なことだ。なお、森久保先生は2004年に91歳で亡くなられている。

 この本は鈴木壽壽子さんの流星塵観測記録を調べているときにお世話になった方からの頂き物だ。自分が持っているよりもあなたが持っている方が良いでしょうというたいへんありがたいお言葉と共にお譲りくださった。鈴木さんについては本文中に観測データが引用されている。また、「日本に於けるアマチュア研究者達」の項にも紹介されている。

今夜の観測:今夜は曇りから雨予報だったのに夕方星が見えていた。ミラ4.5等、W Ori6.9等、RX Lep6.2等、U Mon6.4等。
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iステラ ver.1.1.0発売
2009-02-11 Wed 00:05
090210.jpgiPhoneまたはiPod touch用の天文アプリiステラ ver.1.1.0が出た。追加された新機能は

・彗星の追加。位置と明るさを再現
・彗星のデータ更新機能
・流星群の放射点の追加
・天体検索機能の追加
・恒星の表示等級を最大7等までに拡張
 表示恒星数 16,226個、表示恒星名 254個
・7゚視野円の表示
・大気差による浮き上がり、減光のシミュレーション

Apple Storeでオンライン購入:1000円。旧ヴァージョンからのアップデートは無しなのかな?⇒ver1.0.0を購入していれば無料アップデートできました。

0902103.jpg今夜の観測:帰宅すると東の遠景の上に赤い月が昇り始めていた。ミラ4.4等、R Lep7.8等、RX Lep5.9等、W Ori7.0等、U Mon6.3等。これらいつもの変光星は夕方見てしまい、夕食後は「晴れてるけど月が明るいからパス」とか言い訳して寝てしまうことの多くなった最近。
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『小林・益川理論の証明 陰の主役Bファクトリーの腕力』
2009-02-10 Tue 00:39
090206.jpg『小林・益川理論の証明 陰の主役Bファクトリーの腕力』
  立花隆著 朝日新聞出版 2009年 1900円
 立花隆氏は来る2月21日のシンポジウム「小林・益川理論とその検証」の登壇者の一人。最初シンポの案内を見たときなぜ立花氏かと思ったのだが、彼は1990年頃からつくばの高エネ研の取材を始めていて、廃刊になった『サイアス』(朝日新聞社)2000年4月号から12月号に「消えた反粒子の謎に迫る」を連載していたとのこと。本書の主要部分はその再録になっている。そういう本であるから、これを読めば小林・益川理論の証明が理解できそうなタイトルではあるが、実はそうではなくて小林・益川理論の証明をしたBファクトリー実験のルポなのだ。
 実際Bファクトリーをこんなに詳しく紹介した本はこれまで無かっただろう。研究者への直接取材記事に加え写真、図版、細かい数字が上げられていて臨場感のある読み物になっている。そしてBファクトリーに代表される日本の加速器技術のレベルの高さを紹介するという著者の意図が良く伝わる。しかし一方で、その世界最高水準のBファクトリー加速器の真の姿を伝えるには書き言葉だけでは表現しきれない限界も感じる。
 先端物理学の詳細までは理解できなくとも、少なくとも自国の技術力あるいは科学を含む文化力が世界の中でどの位置にあるのかを認識しておくのは国民の常識かも知れない。そこから技術や文化の裾野は広がるのだろうから。
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月明かりのルーリン彗星
2009-02-09 Mon 10:02
090209.jpg今夜の観測:ミラ4.2等。W Oriは月明かりで比較星が見えないから諦めて一休み。双眼鏡から目を離すと、おぉぉぉ、流れ星。でか~。ゆっくりとしかし鮮やかに色が変化したのが印象的だった。途中で緑色になって爆発。それからRX Lep5.5等、U Mon6.4等。以上、夕方の観測。
 3時半に起きてルーリン彗星を撮影。満月前夜の月明かりをたっぷりと浴びた真っ白な空だが、方向決めの6秒程度の撮影でも簡単に写る。7x50双眼鏡では見えるような見えないような。
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【速報】大火球!
2009-02-08 Sun 19:44
090208.jpg 先ほど、夕方の変光星観測中の19時15分頃、オリオン座の足下からエリダヌス座方向へ黄色に始まりゆっくり橙色から緑に色を変えながら飛ぶ大火球を目撃しました。緑色の途中では爆発したように見えました。光度は金星の最大光度を凌ぎ、特に緑色に爆発したときの光度は比較の対象がありませんので不明です。とくに音は伴っていなかったようです。人工衛星の落下かもしれません。他に目撃された方はいないでしょうか。
 色合いとか違いますが、色の変化はこんな感じでした。

【追記】日本火球ネットワークの掲示板に同時目撃情報が入っていました。
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『CP非保存と時間反転 失われた反世界』
2009-02-08 Sun 00:16
またまた素粒子の本を紹介。机の上に積まれている山もかなり崩れてきたが、崩れるとまた買い足したりなんかして、、、。

0901123.jpg 岩波講座 物理の世界 素粒子と時空2
『CP非保存と時間反転 失われた反世界』 三田一郎著 2001年 1300円

 著者の三田一郎氏はB中間子系のCP対称性の破れが非常に大きい事を理論的に予言し、世界に呼びかけてBファクトリー実験を推進した中心人物だそうだ。本書が発行された2001年というのはスタンフォード大学線形加速器センターとつくばの高エネルギー加速器研究機構それぞれのBファクトリー実験で小林・益川理論の最終検証となる結果が出た年。それと相前後して執筆された本書はそのころの雰囲気を醸し出しているような気がする。

 実は『消えた反物質』を読む前にこちらに目を通していた。内容が易しいわけではないのだが、私のような単なる物理学ファン程度の知識の者が読んでもなんとなく分かったような気分にさせられるところが本書の魅力かもしれない。分かった気分だけでも十分楽しいから良いのだが、やっぱり何も分かっちゃいないことはその後に『消えた反物質』を読んですぐに自覚した。
■小林誠氏の横顔
 CP非保存の問題は昨年のノーベル物理学賞を受賞した小林・益川理論と深く関連している。その小林誠氏と益川俊英氏、マスコミを通じてそれぞれのキャラの違いが際立っているが、小林氏の横顔についてはasahi.com茨城版の「ソリューシの夜明け」に興味深く描かれている。これは、朝日新聞茨城版の地方版にとどめておくには惜しい(と関係者が思うような)「熱血取材」だったそうだ。

■シンポジウムのお知らせ
 先にお知らせしたシンポジウム「小林・益川理論とその検証」はまだ締め切られていないらしい。参加希望者はネットで予約しておけば安心(体験済み)。このシンポの予習として『小林・益川理論の証明 陰の主役Bファクトリーの腕力』(朝日新聞出版、1900円)などはどうでしょう。かすてんはシンポへ行けないのでこれを読みます。
★★
今夜の観測:ますます月は明るい。ミラは4.4等、RX Lep5.8等。その他は見えないか、比較星が見えないかで観測なし。
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『星空公団』 街と星空の共存を目指す
2009-02-07 Sat 00:02
090205.png『星空公団』というサイトをご紹介。
 これは、良好な居住環境の供給を目的とする住宅公団?ではなくて、良好な星空環境の供給を目的として活動している任意団体らしい。夢のあるネーミングに好感が持てる(私の昭和30年代的感覚だろうか)。

 主な活動内容は、(1)夜空の明るさ調査の研究および調査実施、(2)天体観望会活動の開催および開催支援、(3)上記活動に資する機器及びソフトウェア開発ということで、光害調査と天文普及を同時に行っているというわけだ。確かに、街に住む多くの人への天文普及によって星空への理解興味が高まればこそ、ライトダウンや光害対策への協力も得られ易くなる。そういう意味ではすごく正攻法な活動だと思う。活動範囲も中部地方から東北地方まで及び広範囲だ。これはメンバーそれぞれが居住地周辺で活動を展開しているため『星空公団』全体として広くカバーできているということのようだ。
 今後も注目しておきたいサイトだ。

今夜の観測:帰宅して夕食前に取りあえずこれだけ。久しぶりの晴天だが、月明かりのまっただ中でよく見えない。ミラ4.1等、W Ori7.0等、R Lep7.5等、RX Lep5.8等、U Mon6.8等。
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小惑星(8741)Suzukisuzukoの紹介
2009-02-06 Fri 00:14
0902052.jpg 『月刊天文ガイド』2009年3月号の小惑星ガイド「新たな小惑星の命名」欄に(8741)Suzukisuzukoの命名理由として鈴木壽壽子さんについての短い紹介文が載りました。
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GEKKO V4
2009-02-05 Thu 00:59
0902032.jpg 片づけものをしていたらこんな箱が出てきた。同世代の方は懐かしく感じられるだろう。GEKKO V4は天文少年時代に最も頻繁に使ったモノクロ印画紙だ。空の明るいところで写真を写していたのでV4でコントラストの強い堅い感じに仕上げていた。軟調のV1から硬調のV5まで5段階あった。箱もしっかりしていたのでいろいろな小物を整理するのに重宝したが、残っているのは唯一これだけ。因に、「チーホ」というのは後年飼っていたウサギの名前。跳んではねてにぎやかだったので「静かに!」という意味のポーランド語で呼んでいた。
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立春の風景
2009-02-04 Wed 00:02
0901282.png 「冬と春のさかい目の、今日と明日とのさかい目のときに、ボクをさがして」

 昇るカラス座、つつましい「日本の十字星」。春近し。

 『星のふるさと』の1編「からす かんざぶろ」を読んでからは、真夜中0時に南東の空に登るからす座の十文字が私にとっての立春の風景になった。
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1月の晴天日数
2009-02-03 Tue 09:25
年末からの安定した晴天が1月中旬になってパタッと途絶えてしまった。
__________昨年___今年_
 すごい星空!   0夜   0夜
 4等星が見える 15夜  18夜
 1等星は見える  6夜   1夜
それでも、数字だけ見るとまずまずの観測日和に感じるのだが、前半17日までの間に晴天15日あったものが、残りの14日間にはたったの3日。こういう展開になるとは思わなかった。

090203.jpg今夜の観測:久々のミラは4.1等。減光のペースはまだゆっくり。U Ori7.8等、W Ori7.0等、R Lep7.5等、RX Lep5.8等、U Mon7.3等。雨続きの日々の間に水をたっぷり含んで太り始めた月が南西の空高くなってきた。
 明け方、低空には雲が掛かっていて透明度悪かったがルーリン彗星撮影の準備をする。あれ~、TOASTの極望の明視野ライトの電池が切れている!前回オフにし忘れたのかな?暗闇でようよう電池を交換。電池が小さくてめんどくさい。極軸を合わせて終わってスイッチを切ろうと思ったら今度はぐるぐる空回りするだけでオフにならない!そのうちにスイッチがぐらぐらになってしまった。やれやれ今夜一晩で電池使い切りか。気を取り直して撮影に取りかかる。D40をオンにしたら「このメモリーは壊れているので交換して下さい」のメッセージが出た。ひえ~!今夜は何かに憑かれているとしか思えん。一旦オフにしてメモリーを抜き差ししたら正常に動作した。30分ほどで曇ってきたので終了。疲れた。
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小林誠氏のノーベル物理学賞受賞記念講演会へ行ってきた
2009-02-02 Mon 00:43
読者のみなさま、物理ネタがたびたびでご退屈のことと思いますが、いましばらくおつき合いください。

090201.jpg 高エネルギー加速器研究機構(KEK)特別栄誉教授小林誠氏のノーベル物理学賞受賞記念講演会を聴講するために昼食を早々に済ませてつくばの国際会議場(左写真)へ。その開場前の1時間半を利用してS.Uさんにはじめてお会いした。共通する興味の対象である天文や地元の歴史などについて話が尽きず、小林-益川氏のノーベル賞受賞に関連したご専門の研究分野について伺う前に時間切れとなってしまった(もっとも聞いても分からなかっただろうが)。続きはまたゆっくりと教えてもらいます。
0902012.jpg で、講演会は2部構成。第1部は加速器実験でノーベル賞受賞をバックアップしたKEKのBelle実験共同代表山内正則氏の「Bファクトリー実験と小林・益川理論」(右写真)および小林誠氏の「六元模型ができるまで」(下写真)の講演、第2部は小林誠氏、高崎史彦氏(KEK素粒子原子核研究所所長)、山内正則氏が地元の高校生・大学生らからの質問に直接応える形式で行われた。その質問時間は冗長の感を否めなかった(とくに大学生らの質問は幼稚すぎなかったか、もう少しがんばれよ)が、それでも小林氏の回答にはご自身の生真面目で誠実な人柄が存分に現れ、若い人への真摯な回答には共感する事多々あった。⇒[追記]常陽ネットの記事

0902013.jpg 講演会が始まる前には、理解レベルがピンからキリまでの1200人の聴衆に向けて今回の受賞内容を説明するのってはっきり言って不可能と思っていた。ところが、私が楽しめた上にキリに近いヨメさんが眠らなかっただけでなく詳細は別にしてもなんとなく流れを掴んでいるようでびっくりだ。イントロ的な山内氏の解説は十分練り上げられていて分かりやすく、小林氏の講演の前座(失礼)として効果的だったと思う。
 素粒子物理学の現状についてはさらに理解を深めたいと思っている。
★★
今夜の観測:5日振りに星が見えた。W Ori7.1等、R Lep7.5等、RX Lep5.9等、U Mon7.2等、U Ori7.9等。
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2周年
2009-02-01 Sun 00:19
070326 『霞ヶ浦天体観測隊』はおかげさまで2周年を迎える事ができました。昨年も書いたのですが、遠く離れていてもネットのおかげでみなさまとは隣で望遠鏡をのぞいている感覚でおつき合いさせていただき感謝しております。3年目以降もとくに変わり映えはないと思いますが、これまで同様、よろしくお願いいたします。
[写真は2年前の創立直後の春の観測所。写っているのは初代星子]
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