2007年、33年の時間を巻き戻し天文少年ならぬ天文壮年へ再入門。隊員1名。その後の変化でただいま星空は休眠状態。郷土史、草刈り、読書、ドローンの記事が多くなっています。
『消えた反物質』のその後
2009-01-30 Fri 00:56
昨日の続き。

090129.jpg 『消えた反物質』を読んでいると、「中性K中間子の崩壊現象がCP対称性の破れの事実上唯一の証拠」という表現がいたるところに現れる。私的には、唯一だろうが「対称性が破れている」現象がみつかったというだけで十分だと思うが、ここには、唯一特殊なケースではなくより普遍的な現象なので別の事象の中でも見つけたいという著者の気持ちが感じられる。

 この本が書かれた1997年時点ではCP対称性の破れは唯一中性K中間子の崩壊現象の一部でのみ知られていた。その後、米スタンフォード大学線形加速器センター(SLAC)と競うようなかたちでつくばの高エネルギー加速器研究機構(KEK)Bファクトリーでも電子-陽電子衝突実験が行われた。その結果、2001年には中性B中間子の崩壊現象においてもCP対称性の破れが確認され、とくにKEKBファクトリーでの実験では崩壊現象の一部ではなくほぼ100%でCP対称性の破れが検出されたという。

 ここで、中性K中間子の崩壊現象のみにCP対称性の破れが現れるだけでなく、中性B中間子の崩壊現象ではほぼ100%でCP対称性の破れが検出されたという事実によって、さらに何がはっきりしたのか、何が言えるようになったのか、『消えた反物質』に増補改訂するとしたら何が書き加えられるのか、興味あるところだ。
 明後日の講演会でそれに対する回答の一部でも聴くことが出来ればと思うし、さらに、小林-益川理論登場以降36年間の素粒子物理学の流れと現在の状況を分かりやすく解説してもらえることを期待している。
[写真は2004年8月29日の一般公開時の資料など]
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