
私の高校の大先輩に『二十億光年の孤独』という詩を書いた人がいる。その一編「生長」はこうして始まる。
三歳
私に過去はなかった
五歳
私の過去は昨日まで
七歳
私の過去はちょんまげまで
十一歳
私の過去は恐竜まで
<後略>
[『谷川俊太郎詩集』角川文庫 1968年 より一部抜粋]
11歳の先輩は恐竜までというが、学研の『科学』の付録にあった青いプラスチックの四角い星座早見盤をまわしたとき、11歳の私の過去は130億年の昔まで一気に広がった。それは私の人生における精神のビッグバンだったのかもしれない。