33年の時間を巻き戻し天文少年ならぬ天文壮年へ再入門。隊員1名、200mm、65mmの望遠鏡と双眼鏡で星空を楽しんでいます!
21年の変化(その1) 浪岡城の整備
2023-09-22 Fri 00:00
新青森駅でレンタカーを借りて、浪岡城〜田舎館田んぼアート〜田舎館城〜堀越城と2度目の訪問をしながら弘前への道を辿ることにした。まず最初は青森市となった元浪岡町の国指定史跡 浪岡城へ向かう。南東側にあるガイダンス施設は22年前にもあったが、今日は専従職員は居ずなんだか寂れ果てた感じになっていた。前回、ボランティアのおばあちゃんの、聞き取りも難解なネイティブ津軽弁で浪岡城の歴史を聞いたことも夢のまた夢に思われた。モデルコースに従って城内散策をしたが、ところどころ雑草が繁茂してマムシでも出てこないかとちょっと心配になる。写真は北館の西虎口だが、同じ構図の写真がないのであまり比較にはならない。
発掘された遺物などは、近くにある青森市中世の館に展示されているので、そちらにも寄ってみた。

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信太庄山内衆聖地めぐり
2023-08-31 Thu 00:00
この春知り合った水戸の高校生が山内上杉氏のファンだと言うことなので、夏休みを利用して、信太庄山内衆の居城を回ってみることにした。ご案内役を、江戸崎土岐原氏研究の第一人者平田満男先生にお願いした。これまでいくつかの城郭オフ会をやってきたが、このテーマでは初めてだ。

2308211.jpg当日の朝は、まず車を止める場所の草刈りから。
回ったところは以下の場所。
江戸崎城 山内衆の雄、江戸崎土岐原氏の居城。
管天寺  土岐原氏四代景成が土岐原氏の菩提寺として創建したと伝わる。
     土岐原氏と家臣団に関係する供養等が並んでいる。
羽賀城  臼田氏の居城。
昼食
上条城  山内衆の大越氏の居城。
丸山館  山内衆の先陣、臼田氏が最初に拠った布佐郷の館跡という説がある。
木原城  山内衆の近藤氏の居城といわれる。
妙香寺  丈六薬師が安置される。

当日は残暑厳しく蒸し暑い日だった。城館の周囲は雑草に覆われ核心部への侵入は阻まれたが、信太庄山内衆に所縁のある5城館をひとめぐりすることができた。
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平良兼館(桜川市真壁町羽鳥)を上へ上へと辿る
2023-07-06 Thu 00:00
2307031.jpeg2020年の秋に、桜川市の竜ケ井城(遺跡名は平良兼館)とその関連遺構を確認するために竜ケ井城山の会のみなさんと平良兼館から百貫石(263.4m)と呼ばれるところまで歩いたことがあるが、今回は、さらに上の、富士権現(341.0m)から三本松(443.4m)を一回りしてきた。城郭遺構かと問われて、山城によくある地形に似てはいるが決定的な構造が見当たらないと言う答えになった。ただ、この尾根の先端に伊佐々城があり、その上に竜ケ井城があるので、その上方に当たる、百貫石、富士権現、三本松辺りに防御線を置かないということもあり得ない。明瞭な城郭遺構は残っていなくても、竜ケ井城と関連する場所であることに間違いはないだろう。
遺跡名が平良兼館となっているのは、平将門の叔父良兼の営所が羽鳥(服織)にあったことからの伝承に由来すると思われる。現在見られる遺構は平安時代のものではなく、字名がリュウガイになっていることからも少なくとも戦国期に改修されている可能性が高そうだ。ただ、『将門記』の弓袋山の対陣の場面は、この尾根筋に沿った場所を描写しているに違いないと感じられることは、竜ケ井城に纏わるエピソードとして興味を引く部分になる。
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480頁超をiPadへ
2023-07-03 Mon 00:00
2306224.jpg2023年3月末に発行された茨城県中世城館跡総合調査報告書『茨城県の中世城館』が、奈良文化財研究所の「全国遺跡報告総覧」のサイトにアップされている。紙の報告書は制作部数が少ないと聞いていたが、全体がネット公開されたことで必要とする人の元へ届けることができて良かったと思っている。総頁数480頁を越え、その他に添付CDで構成されているこの報告書、本棚も圧迫するし使う度に出し入れするのも結構大変。
そこで、奈文研サイトから全てをiPad Proへダウンロードしてみた。総容量350MBほどなので最近のディバイスにとっては大してメモリを圧迫することにはならない。これで必要な時、特に外出時に情報が欲しい場合にはたいへん利用価値が高まるのではないかと感じる。
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『光る君へ』の予習のために
2023-06-25 Sun 00:00
2306221.jpg『図説 藤原氏』 木本好信・樋口健太郎著 戎光祥出版
                   2023年 2000円

 来年の大河『光る君へ』だけでなく、過去の大河の横糸としても物語を振り返るのに役立ちそうだ。
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古墳の未来を担う力
2023-05-25 Thu 00:00
3年ほど前に、茨城県の古墳についてのミニ講演会を聞きに行った。講師先生はいわゆる研究者ではない方で、私がアマチュアとしてお城の話をする機会があるのと同様に、講師先生は古墳のアマチュアとして講演会をされてきている方らしかった。だからという接続詞は不要だが、話のところどころで?と首を傾げたくなる説明があった。それも聞き流すとして、ちょっとねぇと感じたのは、海洋型古墳の話をしながらそのとき国指定史跡になったばかりの大洗の磯浜古墳群について一言も言及しなかったのにはガッカリで、情報のアップデートができていないのだろうなと感じた。さらにまとめのときに、歴史の集まりは年配者ばかりで盛り上がらないという感想も述べられていた。いやいやいやいや、古墳業界こそ若いエネルギーに満ち溢れているではないか。情弱と言っては失礼だが、どこを見ていらっしゃるのか、これはトドメの1発だった。

2305214.jpgそんなことを思い出したのは、最近こんな本が出たという記事を読んだからだ。[写真は記事内の写真]
 →著者は中学1年生 古墳愛あふれるガイドブック「岡山100名墳」を出版

『岡山100名墳』はにお@駆け出し古墳めぐりすと著 自費出版 2200円

そして3年前の古墳王子くんの以下の作品の感性、ユーモアもすばらしいと感じた。

2305213.jpg『My Soul -埋葬-』 古墳王子制作

おまけにこのときにリプをつけてくれているのが3年後に『岡山100名墳』を出版することになるはにおくんだったんだ。今気づいた。
[写真はツイートの画像をトリミングした]

忙しい若い世代は、講演会や歴史散策会へ参加している暇に行きたい遺跡や若い集まりへ直行しているのかもしれない。それで接点がなく、講師先生が言うように相変わらず歴史の集まりは年配者ばかりになっているのかもしれないな。
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『常総中世史研究』最新刊
2023-05-21 Sun 00:00
2305131.jpg『常総中世史研究 第11号』 茨城大学中世史研究会 2023年

 大河ドラマ『鎌倉殿の13人』で一躍存在感を増した八田知家と彼に誅殺された阿野全成についての高橋修先生の講演録「八田知家と阿野全成事件」は、ここ数年の間に精力的に発表されて精度が高まっている常陸国における八田氏および宇都宮氏に関する活動についてわかりやすく総括し解説されている。齋藤夏希氏の「中世浄土教における了誉聖冏の教義統一と鎮西義白旗派の展開」は昨年の学部卒業論文を手直ししたと書かれているが、学部論文のレベルを越えた超大作と感じる。間宮正光氏の「発掘された行方郡南部の城館と嶋崎氏」は、発掘調査後に破壊された城館の記録も含まれ、発掘調査の仕事をされている著者ならではの内容になっている。その他に、清水亮・田中大喜・菱沼一憲・山縣創明・須貝慎吾「ふみの森もてぎ監修・高橋修編『戦う茂木一族』の成果と課題」、地方史研究協議会『海洋・内海・河川の地域史』についての岡野翔大氏による書評、水戸市立博物館編『那珂川ヒストリー』の新刊紹介など今年号も力作揃いだ。
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氏とか家とか 現代的な思い込みでは中世を理解できそうにない
2023-05-16 Tue 00:00
2204055.jpeg『中世の家と性』 高橋秀樹著 山川出版社 2004年 800円

 氏とか姓とか一門とか家とか名字とか、近世・近代に作られたイメージを元になんとなくわかった気になっているだけかもしれないので、整理を兼ねて読んでみた。日本史リブレットのシリーズなので95ページとコンパクトで、構成は(1)氏と家、(2)結婚と居住、(3)家の継承と相続、(4)家内のジェンダー、(5)さまざまな性からなっている。初読の時はすぐに挫折したのだが、冒頭で北条政子が例として登場するので、『史伝 北条政子』や『鎌倉北条氏の女性ネットワーク』などを読んだこともあり、もう一度挑戦してみたところ初回と打って変わって読み進みやすい印象に変わっていた。ただ、氏や家の概念を明瞭に区別して理解するのは難しいと感じ、宿題として残ってしまったことも確かだ。
 (4)、(5)では、ジェンダーがどのように絵巻物に描かれているかを多くの例を紹介していて、本書の大きな魅力だと感じる。
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1年前に出版されていたら
2023-05-11 Thu 00:00
2304223.jpg『鎌倉北条氏の女性ネットワーク』 田辺旬・野口華世編著
                小径社 2023年 2000円

 昨年のNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』では、政子他、妹阿波局、時政正妻の牧の方、比企尼などさまざまな中世の女性像が提示されているのがとても興味深かった。道普請するむさ苦しい侍として登場した八田知家だが、頼朝との付き合いはおそらく他の御家人とは比べ物にならないほど長く深いはずで、ドラマにこそ登場しないがそこには知家の姉であり頼朝の乳母の一人寒河尼の存在が透けて見えていた。
 ドラマの放映中に本書が出ていたらよりリアルタイムに楽しめたはずだし、(自分が心配する立場では無いが)本の売り上げにも追い風になっていただろうと思ってこのタイトルをつけたのが、1年前に同じテーマの本(以下のリンク)がすでに出ていたことを本書を購入してから知った。なんで目に留まらなかったのだろう。本書を読み終わって気が向いたらあちらも読んでみようかと思う。
 本書が取り上げているのは、有名な北条政子とその妹たち:足利義兼妻、阿波局、畠山重忠妻、宇都宮頼綱妻、北条執権九代の妻たち:牧の方、姫の前、伊賀の方、矢部禅尼、松下禅尼、北条経時妻、葛西殿、堀内殿、覚海円成、北条高時妻妾、摂家将軍の妻たち:竹御所、檜皮姫、そして、足利尊氏妻赤橋登子の以上18人と大勢。執筆陣は若手揃いというところにも期待できる。

 気になる女性はたくさんいるが、まずは、北条泰時正妻矢部禅尼から読んでみたい。矢部禅尼は、『鎌倉殿の13人』では初という名で福地桃子さんが演じた。三浦義村の娘らしく、物に動じないがふんわり包容力もあるという演出だった。ドラマでは仲睦まじかったが、現実には長男時氏を産んだ後すぐに離縁している。しかし、その後も北条氏とは良好な関係だった様だ。そのこともあって宝治合戦で三浦一族が滅亡した後に、彼女の子が三浦介を継承していくことになる。
 宇都宮頼綱は、北条義時に幕府転覆の嫌疑を掛けられ危機一髪の窮地に陥るが、その妻の母牧の方や大叔母寒河尼のネットワークに救われたとされる。出家して妻と共に京都へ移り、藤原定家の子為家の舅となり歌壇でも活躍する。牧の方、頼家妻、為家妻は仲が良く、しっかり自己主張もする中世の女性らしい三代だったようだ。かつて悪女として語られてきた牧の方だが、『鎌倉殿の13人』では策略を巡らしながらも陰湿ではなく描かれ、新しい牧の方像が提示されたのは良かったと感じる。
 さて、次は誰を読もうか。

 →『鎌倉北条氏の女性たち』 今井雅晴著 教育評論社 2022年 1760円
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近現代の茨城を概観
2023-05-09 Tue 00:00
2304224.jpg『いばらき歴史紀行』 文・井坂幸雄 絵・奥川洋治
               茨城新聞社 2022年 700円

 2022年1月から9月に茨城新聞に連載された紀行文をまとめたもの。
 2020年秋に、常陸太田城の発掘調査に伴う現地説明会があったが、その場所は日本たばこ産業の工場跡地だったが、本書の「水府たばこと常陸秋そば 〜赤土町で生まれた茨城の逸品」を読んで、常陸太田は江戸時代初期にたばこ栽培が始まった産地で、その中心にあるたばこ工場だったことを初めて知った。
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忍性と良観
2023-05-06 Sat 00:00
2304222.jpg『忍性の真実』 理崎啓著 哲山堂 2018年 1500円

 師叡尊をして「慈悲に過ぎる」と言わしめた忍性、三村山極楽寺(現在のつくば市小田)に足掛け10年止住し、布教活動を行った律宗の高僧といわれる。一方で、鎌倉においては日蓮を追い落とすため幕府に取り入った世俗まみれの僧良観と語られることもある。
 戒律を重んじる律宗の高僧ということで厳格な人物像を想像していたが、意外にもアバウトな部分もあるらしい。つまり、結界というのはその内部では厳格に戒律を守る、でもねその外では、、、ということなのだろうか?
 忍性の人となりにそれほど興味があるわけではないが、忍性本人あるいは関係者は県南の中世史に大きく関わっていることは確かなので、何かヒントを得られないかと目を通した。忍性を知るには師匠・叡尊、そして生涯の敵・日蓮を知れということで、本書は叡尊と日蓮が見た忍性という視点で書かれている様に感じられた。
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中世律宗の当地での活動も知ることができそうな書籍
2023-04-27 Thu 00:00
2304102.jpg『鎌倉新仏教と叡尊教団』 松尾剛次著 法蔵館
                  12000円 2019年

 地元の中世史と直結するであろう関東地方での律宗の活動についても知りたいと思い、『中世叡尊教団の全国的展開』の続刊である本書も買うことにした。こんなに出費した上からは、地元の中世史における律宗の活動、意義みたいなことの片鱗でも掴みたいものだ。
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「軍隊」を抱きしめた町の戦前・戦中・戦後
2023-04-26 Wed 00:00
2304111.jpg『「軍都」を生きる 霞ヶ浦の生活史 1919-1968』
             清水亮著 2023年 岩波書店

 2月末に土浦のカフェで偶然著者にお会いする機会があり、本書の存在を知った。その時はお互い自己紹介をしたくらいだったが、持って帰ったチラシを見たヨメさんが俄然興味を示し早速図書館にリクエストして読んで、これは地元の人は読んだ方が良い本、特に歴史とか文化財を通して阿見町に関わるあんたみたいな人は絶対に読むべき本という感想を言っていた。ということで遅ればせながら自分でも購入して読むことにした。
 大正8年(1919)、開拓地であった台地上の阿見原(あみっぱら)で霞ヶ浦飛行場用地の買収、続いて建設が始まり、その後霞ヶ浦湖岸に霞ヶ浦海軍航空隊水上班ができ、そこへ横須賀から予科練が移駐してきて土浦海軍航空隊となり、さらに霞ヶ浦飛行場の場所は霞ヶ浦海軍航空隊となっていく。敗戦後の平和憲法の下、旧海軍跡地は軍事の町から学園都市への転換が目指されたがまもなく挫折、そこから自衛隊誘致が始まり今に至る。この1919年から1968年の間の50年史が、社会学者らしい詳細な資料発掘と聞き取りによるフィールドワークの手法によって綿密・客観的でそれでも生き生きと語られる。読みやすくはあるが表現は豊かで、筆力を感じる。
 基地問題は遠い沖縄の話、とは到底思えないくらい日常生活に近接したところに陸上自衛隊霞ヶ浦駐屯地や同土浦駐屯地はあるし、知人の中には何人もの自衛隊関係者もいるというのにこれまで関心があったとは言えない。「おそらく軍事化の”成功”は、人々が軍事基地に諸手を挙げて盲目的に賛成するようになることではない。(中略)軍事基地が、あたりまえの存在としてなじむことこそ、思考や社会関係を組み替える軍事化の一つの到達点である」という部分を読み、精神面からすでに軍事化に組み込まれかけている自分にハッとさせられた。また、本書で言及されたわけではないが、原発誘致の構造と軍事組織誘致は麻薬の魅惑相似形にも見えてくる。
 阿見町の予科練記念館の展示には物足りなさを感じたことがあるので、本書で予習してから展示を見て、見終わったら再読するという手順をお薦めしたい。阿見・土浦は戦前・戦中・戦後と軍隊の町とひとくくりのイメージで語られがちだが、決して連続ではなかったことを改めて確認した。 ともかく、最初から最後まで気付かされることの多い内容豊かなドキュメンタリー本といえる。
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茫漠たる篠と蔦の海
2023-04-21 Fri 00:00
2304201.jpgドヤブの下に眠る中世を探しにとは書いたが、茫漠たる篠と蔦の海を見るたびに呆然となる。38年の時間は長い。
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叡尊の活動をヒントに常陸における忍性を知ることはできないだろうか?
2023-04-20 Thu 00:00
2304091.jpeg『中世叡尊教団の全国的展開』 松尾剛次著 法蔵館
                  12000円 2017年

 鎌倉時代の建長4年からの足掛け10年間、三村山極楽寺に入った忍性を中心として常陸国内で律宗の活動が展開されるが、忍性が極楽寺を拠点に信太庄方面まで教宣を延ばしながら、どのような場所でどのような方法で活動を展開したのか、律宗のやり方を知るために忍性の師である叡尊(えいぞん)教団のことをちょっと勉強してみることにした。ちょっとと言うには値の張る本だが、県立図書館にも県南のどこの図書館にも収蔵されていないので自腹で購入した。昨年度の地元での城館活動に対して思わぬタイミングで思わぬまとまった報酬が入ったので、これで勉強して地元へ還元するのが最も有効な使い方だと考えて奮発した。
 本書は、全国的展開というタイトルではあるが、扱っている各論は中部地方以西なので関東は続刊になるようだ。ただ、第1部「叡尊教団の社会救済活動」は総論的内容で、全国の社会的インフラ整備に関わる部分は当地元での律宗の活動を考える際にも大いに役に立つ。そして各論にも、師叡尊の他地域における活動から常陸における忍性の活動を推測するためのヒントがあるはずだと期待する。
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ドヤブの下に眠る中世を探しに
2023-04-19 Wed 00:00
2304161.jpeg先日、午前中の仕事が終わった後、阿見町の塙城址保存会の定期総会にお呼ばれして、塙地域の中世的な景観についてお話をさせてもらった。午後は、何箇所かに分かれて整備作業。このドヤブの下に中世が眠っているのだが、日の目を見るのはいつになるだろうか。
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平成の大合併後の編纂成果
2023-04-12 Wed 00:00
2304024.jpeg『常陸大宮市史 資料編2 古代・中世』 常陸大宮市
                    3500円 2023年

 これといったお手伝いもしていないと思うのだが、『常陸大宮市史 資料編2 古代・中世』をご恵贈いただいた。本体858頁で、カラー口絵32頁、目次58頁を加えると948頁の大部となる。佐竹氏関係の文書を中心に総数1416の史料が収録されている。これでもまだ、点数が膨大な東義久関係史料と武家の系譜史料は別に刊行する予定だとある。多くの史料には【解説】が付され、あるいは【研究】として参考文献や研究論文の参照もしやすくなっている。城館の解説頁も『図説 茨城の城郭』3部作(『改訂版』、『続』、『3』)から72城を転載し、総数105城を取り上げ充実している。今後の佐竹氏研究には必携本となるだろう。ただ、我が家にとっての難点は5.5cmの厚さ。この前日に届いた中世城館跡総合調査報告書の2.5cmと合わせて8cmのスペースを本棚にどう確保するかが目下の課題だ。

 内容および購入方法は以下のリンクを参照願いたい。

 →【4/18発売】『常陸大宮市史 資料編2 古代・中世』を刊行しました!
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茨城県中世城館跡総合調査の報告書が完成
2023-04-09 Sun 00:00
2304011.jpeg『茨城県中世城館 ー茨城県中世城館跡総合調査報告書ー』
              茨城県教育委員会 2023年 

4月1日、茨城県中世城館跡総合調査報告書が届いた。486頁の中に、城館1135ヶ所のリスト、分布地図、673城館の解説、論考が収められ、膨大な文献調査資料、城館関連地名一覧などは付属DVDに収録されている。正誤表のためのチェックを提出し終われば5年間の作業が全てが完了する。
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桜花爛漫の県北で城館踏査会
2023-04-05 Wed 00:00
常陸大宮市内と常陸太田市内で城館踏査会。自分は午後から参加。県南の桜はかなり散ってしまっているが、県北はいまが盛りの一日だった。

2304022.jpeg 2304023.jpeg 2304021.jpeg
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地元の南北朝時代について勉強し直す機会
2023-03-24 Fri 00:00
2303182.jpg『図説 常陸武士の戦いと信仰』 茨城県立歴史館編
            戎光祥出版 2023年 1800円

本書は、2014年初春に茨城県立歴史館で開催された特別展『常陸南北朝史 ーそして、動乱の中世jへー』の図録を基にして、戎光祥出版の図説シリーズとして全面的に書き直されたものだ。僭越ながら私も小さなお手伝いをさせていただいたので、改めてこの新刊書で勉強し直したいと思う。
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あそこに城はねぇんだよなぁと師匠は言っていたが、、、
2023-03-20 Mon 00:00
茨城県の中世城館跡総合調査も自分が関われることは終わったのだが、つい先週、某郷土史家の先生から大量のフィールドノートを寄託された。コロナ禍がなければ何年も前にお会いできていて、総合調査に反映できたはずなのだが、そうならなかったのはちょっと残念に思う。こうなったら、『図説 茨城の城郭』の続刊で利用させていただくのがもっとも有効な道に思われる。

2303191.jpeg報告書にはまだ書けない未確認城館もいくつかあり、今日はその一つに行ってみた。手がかりは諏訪大明神の祠と大日如来の板碑。その一帯が砦跡だったとされる。

2303192.jpeg諏訪大明神と思われる祠を見つけた後、道端で草取りをしている93歳のおばあちゃんからいろいろとお話を伺い、お屋敷の裏山も歩かせていただくが手がかりなし。お話の中に出てきたかつて遊山講(ユサンコ)で行ったという場所が気になったのでやぶをかき分け行ってみたら、そこはまさしく大日塚。

2303193.jpeg塚の頂上には探していた板碑があるではないか。この丘が城址ということになるが、残念ながら明瞭な城郭遺構はこの時には見つけられなかった。

2303194.jpeg帰宅途中、地元の城址公園に寄ったら、ソメイヨシノが咲きかけていた。でも、今日の風は冷たい。
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4コママンガで描く学芸員の日常
2023-03-14 Tue 00:00
2302271.jpeg『学芸員の観察日記:ミュージアムのうらがわ』 滝登くらげ著
                文学通信 2023年 1760円

ツイッターで学芸員の日常を4コママンガで描く滝登くらげさんの「学芸員の観察日記」の書籍化。
 →学芸員の観察日記(@taki_kurage)

学芸員は、これまであまり取り上げられてこなかった職業なので知名度はそう高くないのかもしれないが、一方で、たいへんお世話になっている人も多い、一般人との距離が極めて近い研究職だと思う。それだけに知る人ぞ知るあこがれの職業の一つだと思うが、努力や能力でなれるわけでもないところが、目指す人にとってはなんとも辛いところだろう。自分は大学の最後の年に博物館学の集中講義を選択したことがある。講義と実習は全てクリアしていたのだが、乗鞍での実験からの帰宅直後に提出締め切りの1本だけレポートを提出せず学芸員補申請の資格を得ることができなかった。当時、科学館などの学芸員になろうとは思っていなかったので単位に執着はなく、担当教官に泣きつくこともしなかったが、なまじそこで資格を得てしまっていたら、自分の人生、さらに沼に嵌っていたかもしれない。ということもあって、自分が選ばなかった世界で活躍する各地の学芸員さんたちとの交流を今は楽しんでいる。
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宍戸庄の史跡と遺物を辿る
2023-03-10 Fri 00:00
2303071.jpeg『鹿島と香取』の特別展を見に水戸の県立歴史館へ。午後は、先日の笠間歴史フォーラムで聞いた宍戸庄の史跡と遺物を辿った。
 歴史館〜宍戸城(宍戸陣屋)〜歴史民俗資料館〜平町 新善光寺跡(八田知家の供養五輪塔)〜上郷 羽梨山神社〜安国寺〜下郷 不動院。

2303072.jpeg1枚目:宍戸陣屋の土塁。脇に旧陣屋コミュニティーセンターが建ち、駐車場には解説看板も設置されている。


2枚目:新善光寺跡。八田知家と宍戸家政の墓といわれる五輪塔。

2303073.jpeg3枚目:上郷のどん詰まりにある羽梨山神社。
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『百人一首』成立の場にいた宇都宮氏
2023-03-06 Mon 00:00
2301201.jpeg『百人一首の現在』 中川博夫・田渕句美子・渡邉裕美子編
                青簡社 2022年 9000円

『百人一首』は、藤原定家が蓮生(宇都宮頼綱)の山荘の障子に押す色紙形に書いた歌が元になったということは、田渕句美子「『百人一首』の成立をめぐってー宇都宮氏への贈与という視点からー」(江田郁夫編『中世宇都宮氏』収録)で読んだことがあったが、本書には田渕氏のほか多数の著者の論文が成立について触れているので、蓮生の関わりやその存在感についてさらに知ることができそうだ。
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スペードのエース
2023-02-17 Fri 00:00
入稿直前・直後のドタバタが良い方向で解決を見た。
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県の城館調査で自分が関われる部分はほぼ終了
2023-02-13 Mon 00:00
この5年間やってきた茨城県の中世城館跡の総合調査の校正原稿を事務局へ送付し終わった。まだ若干のやりとりはあるだろうけど、大方は終わって、いまはいろいろな意味でぐったり。県の大規模調査ではあったが、やってみて、我々の城郭研究会オリジナルの出版物には今後も存在意義があることを再認識できた5年間だった。
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奉社、奉射、歩射、ブシャ、ビシャ、オビシャ、オピシャ、、、
2023-02-03 Fri 00:00
2301271.jpeg26年前にこの稲敷地域に越してきて初めて耳にし体験したことはたくさんあるが、「奉社(ぶしゃ)」もその一つだ。自分が住み始めた地区の奉社は、コンパクトなお社である奉社神様[右写真]の前で執り行う集落の正月行事だった。当屋が前年から預かっていた奉社神様を会場へ持参し、前年の報告と本年の取り決め、その他懸案事項について全戸出席で話し合う。最後に当屋は低頭する参加者の頭上を榊で清めながらひと回りし、本年の当屋へ奉社神様を送り渡して終了する(もしかすると、送り渡しの後に話し合いだったかもしれない)。その後、直会として新年会・宴会が始まるという流れだった。自分が来る以前は当屋の家で奉社が行われていたので、裏方で食事や宴会の準備をする当屋と同じ班の女性方(女衆)はたいへんだったと聞かされた。その後、自分が参加した時点では会場は地域の集落センターへ移っていたが、食事と宴会はセンターの調理室を使って女性方が準備していたのでやはりたいへんだったと思う(自分を含めて男どもはその頃には酔っ払っているだけだったのでorz)。さらにその後、食事は仕出しになり、高齢者の顔ぶれも1年又1年と寂しくなり、宴会も(片付けられないからさっさと帰れも含めて)手短にと簡素化されて行った。こうした民俗行事は、地域の人口減や高齢化によって、時代と共に簡略化される傾向にあるが、この地区でも5年前に奉社仕舞いをして正月の寄合全部が消滅した。

2301251.jpg『茨城史林』第46号 2022/6に掲載された、近江礼子さんの論文「茨城県南・県西の正月行事「オビシャ」ー年の初めのトウヤ引継ぎの祭ー」を読んだ機会に、オビシャに関する比較的新しい以下の資料も併せて目を通してみた。近江論文には茨城県内の多くの奉社および類似行事が記録されていて、今後調査を積み上げていく際の基礎データになると思われる。

『オビシャ文書の世界』水谷類・渡部圭一編 岩田書院 2018年 3800円
 いわゆる村方文書はいまでいう公式文書だが、それとは異なり仲間内の記録である奉社日記は、近世の村の成立や祭祀を紐解ける文書群で、この近隣でも17世紀初頭のものなど貴重なものが次々と見つかり出しているらしい。編者のお一人渡部圭一氏の論考「近世「村の鎮守」祭祀の成立 ーオビシャ文書からの挑戦ー」のはじめにの中でオビシャの傾向を「年頭に行われる村の鎮守祭祀の一環で、南関東に広く分布し、儀礼的には歩射や饗応を中心とする点、組織的にはしばしば当屋祭祀のかたちをとっている点、そして史料的には近世前期にさかのぼる引き継ぎ文書をともなう点」と整理していて、これはそのままオビシャとはおよそこういうものというまとめになると思う。
 この本の中で、星天の会の知人の集落が取材されていて驚いたが、確かに彼のところは古い集落だったと思い出した。

『企画展図録 オビシャはつづくよ400年』 千葉県立関宿城博物館 2019年
 『オビシャ文書の世界』は文書にポイントを絞っている研究書だが、こちらは展示会図録なのでカラー写真も多くて、内容的にもオビシャ全体についていろいろな側面からよく調査、整理されている。

奉社は、早いところでは1600年頃から何百年間も地域に根付いて当たり前のように続いてきた行事だが、今後もこれまで同様に維持していけるのかはなかなか難しい社会状況の中にあると感じる。奉社に限らず身の回りに古い行事が残っている幸運な方は、いま記録しておけば必ずや貴重な資料になると思われる。残念ながら地元の奉社は無くなってしまったが、一時期でもこの行事の空間へ入れたことは貴重な体験だったといま改めて感じている。地元以外では、2003年1月に龍ケ崎市貝原塚の歩射を見学させていただく機会があった。ところが、どういうわけかこれら3著には登場しない。この20年の間に消滅してしまったのだろうか不安になる。来月の会議で近江先生にお会いできるのでお尋ねしたいと思っている。
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古墳についての最近の講演動画
2023-01-27 Fri 00:00
古墳についてのおもしろそうな講演記録をまとめておく。この辺りに目を通しておけば、中心部と辺縁部を理解できる期待がある。「継体天皇の時代」は全部で4時間半、基調講演「茨城県の古墳」が1時間半、シンポジウム「大王墓と紀伊の首長墓」も4時間と長いが、一気に視聴したいと思う。

新大阪学事始〈なにわ古代史3〉「継体天皇の時代」
 第1回「異色の出自と即位―なぜ今城塚が真の継体陵か」(2020年2月4日)
 第2回「日本の兵馬俑」(2020年2月18日)
 第3回「磐井の乱と朝鮮派兵」(2020年2月25日)

シンポジウム「茨城県の古墳」(2021年12月13日)
 基調講演 茨城大学・田中裕「茨城県の古墳」

シンポジウム「大王墓と紀伊の首長墓」
 -百舌鳥・古市古墳群と岩橋千塚古墳群に映し出された政治と社会-
  (2022年2月13日)
 松木武彦氏「世界史における日本の古墳」(30:00〜51:15)は、日本の古墳の世界史上での位置を示すおもしろい内容。
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茨城県の古墳についての基礎知識
2023-01-26 Thu 00:00
・【速報】国内最大の「鉄剣」と前例ない形の「銅鏡」“日本最大の円墳”から発掘 奈良市 富雄丸山古墳
 次々と古墳時代の新発見が続いているので、頭の中を整理しておきたいのだが、どこからやればよいのだろう。

 例えば、茨城県の古墳についてならば、2021年12月13日に開催されたシンポジウム「茨城県の古墳」での、茨城大学田中裕先生の基調講演がよくまとまっているように思う。
 →シンポジウム「茨城県の古墳」基調講演 茨城大学・田中裕「茨城県の古墳」
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筑波山系シリーズの第4作目完成
2023-01-08 Sun 00:00
正月明け、かすみがうら市の鈴木敏信さんからレターパックが届いた。これまで自費出版されてきた筑波山系シリーズの4冊目だ。

2301061.jpeg 『筑波山系の山路を辿る』   2015年6月
 『筑波山系から歴史を辿る』  2017年6月
 『筑波山系から歴史を辿る 付日本歴史・常陸国歴史』
                2019年5月
 『続 筑波山系から歴史を辿る』 2022年12月

鈴木さんと出会った経緯は「筑波山系踏破のみごとな記録」に書いたことがあるが、その後も講演会でお会いしたり、踏査情報をお送りいただいたり、偶然にも筑波山でお会いしたりと、交流を続けていただいている。
近頃は、行き当たりばったり書き始めても、ソフトでいくらでも修正して完成へ辿り着けるが、鈴木さんの場合はスケッチブックに手書き(手描き)なので、まず頭の中に1ページの構成がイメージとして完璧に整理された状態で書き始めるのだと思う。そのデザイン感覚は本当にすごいと思っている。
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